2008年10月27日
北海道の川を旅する 《後志利別川06 6/E》
2006年11月02日00:00
夜空
やがて陽は落ちたが、我々のテンションはアルコールの力で最高潮に上がっていた。
KKは僕が頻繁に小便に立ち上がるのを笑い、ジョーという音を聞いてまた笑った。
僕はビールを飲むと、とにかくトイレの回数が多い。
9月1日。
北海道では盆を過ぎると、外の空気が秋のものへと一気に変る。
日中は暑かったこの日も、すでに吐く息が白くなりつつあった。
焚き火にあたりながら、下ネタで大いに笑う。
十勝川で一人きりでやった焚き火とは何もかもが違う。
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夜空
やがて陽は落ちたが、我々のテンションはアルコールの力で最高潮に上がっていた。
KKは僕が頻繁に小便に立ち上がるのを笑い、ジョーという音を聞いてまた笑った。
僕はビールを飲むと、とにかくトイレの回数が多い。
9月1日。
北海道では盆を過ぎると、外の空気が秋のものへと一気に変る。
日中は暑かったこの日も、すでに吐く息が白くなりつつあった。
焚き火にあたりながら、下ネタで大いに笑う。
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2008年10月25日
北海道の川を旅する 《後志利別川06 5》
2006年11月01日23:25
上陸
結局、大将と呼ばれる屈強な枝(幹?)をも積み込んだボイジャーは、野営地までの間、最後と思われる落ち込みを迎えていた。
餅「おぃ、どっちだ!?」
KK「わかんねぇ、毎回ながらわかんねぇ」
と言うように、あれよあれよという間に落ち込みはやってくるのだが、まったく上達しない我々タンデム。
結局落ち込みの前で座礁。ザー。
多いぞ、ライニングダウンの回数が。
そして、ついにキャンプ地となる川原が見えた!
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上陸
結局、大将と呼ばれる屈強な枝(幹?)をも積み込んだボイジャーは、野営地までの間、最後と思われる落ち込みを迎えていた。
餅「おぃ、どっちだ!?」
KK「わかんねぇ、毎回ながらわかんねぇ」
と言うように、あれよあれよという間に落ち込みはやってくるのだが、まったく上達しない我々タンデム。
結局落ち込みの前で座礁。ザー。
多いぞ、ライニングダウンの回数が。
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2008年10月24日
北海道の川を旅する 《後志利別川06 4》
2006年10月19日21:43
ガツガツ、ゴンゴンと利別川
のんびりと静水に近い川を下っているかと思えば、遠くからゴォーッと瀬音がしてくる。
そういったところは、白波が遠くからでも見える。
難易度の高い瀬は無いとふんで、倒木や人口工作物が見当たらない瀬はスカウティング(下見)なしで突っ込む。
「おおおおおっ、この瀬はどう行く!?」
「あっちルートがいいぞ?」
「いや、もう遅いぞ!」
「どりゃ、いけぇ~~~~っ!」
というやりとりが数回続いた。
楽しくてしょうがない!
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ガツガツ、ゴンゴンと利別川
のんびりと静水に近い川を下っているかと思えば、遠くからゴォーッと瀬音がしてくる。
そういったところは、白波が遠くからでも見える。
難易度の高い瀬は無いとふんで、倒木や人口工作物が見当たらない瀬はスカウティング(下見)なしで突っ込む。
「おおおおおっ、この瀬はどう行く!?」
「あっちルートがいいぞ?」
「いや、もう遅いぞ!」
「どりゃ、いけぇ~~~~っ!」
というやりとりが数回続いた。
楽しくてしょうがない!
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2008年10月23日
北海道の川を旅する 《後志利別川06 3》
2006年10月10日23:47
後志利別川
長万部岳を水源とした後志利別川は、美利河ダムで堰き止められた後、山間を流下し今金町住吉で平野部に出て、瀬棚町で日本海に注ぐ、全長75キロの道南で唯一の一級河川だ。
国土交通省が行う水質調査では過去数回、『清流日本一』の座についている。
その川が、目の前にあった。
清流とは、とても呼べない流れだった。
川の水は茶色く濁り、ふとした瞬間に、ドブ川の異臭すら感じる。
しかし、出発前の興奮は僕らを包み込み、用意の手を急がせた。
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後志利別川
長万部岳を水源とした後志利別川は、美利河ダムで堰き止められた後、山間を流下し今金町住吉で平野部に出て、瀬棚町で日本海に注ぐ、全長75キロの道南で唯一の一級河川だ。
国土交通省が行う水質調査では過去数回、『清流日本一』の座についている。
その川が、目の前にあった。
清流とは、とても呼べない流れだった。
川の水は茶色く濁り、ふとした瞬間に、ドブ川の異臭すら感じる。
しかし、出発前の興奮は僕らを包み込み、用意の手を急がせた。
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2008年10月22日
北海道の川を旅する 《後志利別川06 2》
2006年09月30日00:16
ロケハン
車は順調に中山峠を越え、8時頃には太平洋側へと出た。
左手に荒れ気味の太平洋を見ながら、今日現れるであろう瀬の話をする。
「あの荒波を食らってはひとたまりもないけどさ…」
「川にあんな波ないべ」
どうでもいい会話ははずみ、長万部から今度は日本海側を目指す道へと入る。
道の脇を流れる小川は、澄んだ水を湛えている。
日本一の清流(国土交通省調べ)後志利別川にいやがおうにも期待がふくらむ。
しかし間も無く現れたそれは、我々の過剰な期待を、まっこうから裏切ったのである。
「うっゎ、にごってる…」

泥水だった。。。
見た感じ、こんなところでは沈したくないなと、思うような泥水であった。
何が日本一なのだろうか…
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ロケハン
車は順調に中山峠を越え、8時頃には太平洋側へと出た。
左手に荒れ気味の太平洋を見ながら、今日現れるであろう瀬の話をする。
「あの荒波を食らってはひとたまりもないけどさ…」
「川にあんな波ないべ」
どうでもいい会話ははずみ、長万部から今度は日本海側を目指す道へと入る。
道の脇を流れる小川は、澄んだ水を湛えている。
日本一の清流(国土交通省調べ)後志利別川にいやがおうにも期待がふくらむ。
しかし間も無く現れたそれは、我々の過剰な期待を、まっこうから裏切ったのである。
「うっゎ、にごってる…」
泥水だった。。。
見た感じ、こんなところでは沈したくないなと、思うような泥水であった。
何が日本一なのだろうか…
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2008年10月21日
北海道の川を旅する 《後志利別川06 1》
2006年09月20日23:13
気楽旅へ
いつも出発前というのは、慌しい。
今回は特に、9月1日に出発という、ギョーカイでは禁じ手とも言える時期での有休を見込んだ上での旅。
やはり忙しさで、直前まで出られるかどうかわからなかった。
8/31まで全力で仕事して、なんとか週末を休める状態にできた。
「よし、行けそうだ!」
この旨、連絡せねばならない。
今回の川旅は、単独行ではない。
悪友『KK』とのタンデム行だ!
よっしゃKK、行けるぞ!
続きを読む
気楽旅へ
いつも出発前というのは、慌しい。
今回は特に、9月1日に出発という、ギョーカイでは禁じ手とも言える時期での有休を見込んだ上での旅。
やはり忙しさで、直前まで出られるかどうかわからなかった。
8/31まで全力で仕事して、なんとか週末を休める状態にできた。
「よし、行けそうだ!」
この旨、連絡せねばならない。
今回の川旅は、単独行ではない。
悪友『KK』とのタンデム行だ!
よっしゃKK、行けるぞ!
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2008年10月19日
北海道の川を旅する 《十勝川06 7/E》
2006年08月02日23:33
さすらい
中島橋あたりから、ついに小雨が降ってきた。
それまでは半袖Tシャツで頑張っていたけど、限界。
そこから少し行った中州に艇を寄せて降り、荷物の中からウィンドブレーカを着込む。
雨はサーと降り続けた。
風流な春雨なら濡れて参ろうとも思うかもしれないが、この逃げ場の無い雨はカンベン。
なにせ、ゴールの後は札幌までの孤独なドライブだ。
とにかく濡れるにしても、先を急ごうと思った。
近づくと逃げていくアオサギ、ぽつらぽつらと見える釣師。
この川をただひたすら漕いでいた。
ふと騒がしい岩壁。
見ると数え切れないほど多くの黒く小さな鳥が、川に浸食された地層部分に無数の穴を作り、寝床としている。
ツバメの類であろうか。
ボイジャー号と僕は、自然半分・人口工作物半分の環境をもくもくとすべっていった。
いくつの橋を越えてゆくのだろう。
コンスタントに漕ぎ進み、平原大橋、すずらん大橋を越える。
ついに帯広市のシンボルでもある十勝大橋が見えた。
遠くからこの橋が見えた時は、かなり感動した。
これだけ特徴的な橋を目の前にすると、少しドキドキ感が沸いてきた。
が、それもつかの間、その橋が文明的であればあるほど、橋の下側には冷たく辛く、その姿が映りこむ。
この頃、雨がやみ、雲の切れ間から青空がほんの少しのぞき、気温も上がってきた。
河畔林ごしに恐らく児童用の球場かグラウンドかあるのだろう、試合中の歓声が聞こえた。
うれしい。
僕はこの川を下ってきて、ひたすら寂しかったのだと気がついた。
川は幅を広げ、かつ深さも増し、とうとうと流れていた。
両岸の林から、鳥のきれいな鳴き声が聞こえる。
雲の切れ間から、太陽も顔を覗かせた。
この旅はもうすぐ終わる。
ガイドマップによると最後の瀬。
小さな波に、上下に揺られながら、軽く漕ぎ、なるべくゆっくり進むようにする。
ここへきて、ようやく川下りの楽しさを取り戻してきた。
もうすぐ十勝中央大橋、十勝川温泉。
ここに7年間をともにした愛車が待っているはず。
ゴールして、片付けたら、温泉に入ろう。
ゆっくり風呂に入ろう。
携帯はすでにつながらなくなっている。
何年かぶりに、公衆電話を使って心配してるはずの大奥さまにに連絡してみよう。
十勝川は札内川と合流した。
札内川も、それ自体川下りに適した大きさの川だ。
ますます川は大河化し流れた。
流されて、流れて、漕いで。
この二日間、僕は水の上で自由だった。
ただ、ちょっと技術が無く、ツイてなかった。
もうすぐゴールのこの時に、次の川のことを考えていた。
さすらおう この世界中を
ころがり続けてうたうよ 旅路の歌を
まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
風の先の終わりを見ていたらこうなった
雲の形を まにうけてしまった
さすらいの 道の途中で
会いたくなったらうたうよ 昔の歌を
人影見あたらぬ 終列車 一人飛び乗った
海の波の続きを見ていたらこうなった
胸のすきまに 入り込まれてしまった
誰のための 道しるべなんだった
それを もしも 無視したらどうなった
さすらいもしないで このまま死なねえぞ
さすらおう…
そして我がボイジャー号は、十勝中央大橋を越え、愛車イプサムの元へと到着した。
******************************************
北海道の川を旅する《十勝川06》 あとがき
******************************************
もし全て読んで頂いた方がいたのなら…
僕の自儘な紀行文に、おつきあい頂きありがとうございました。
この旅を、会社のエライさんに話したら、「お前は会社組織の人間なんだから」と自制を促されました。大笑
確かに後から考えると、よく生きて帰ってきたなとも思います。
でもね、統括支店長。
人には危険をおかす自由がね、あるはずなんですよ。笑
その統括支店長は、かつてヒグマと5メートル遭遇しているらしい。
僕の危険なんて、たいしたことないっすよ。
さすらい
中島橋あたりから、ついに小雨が降ってきた。
それまでは半袖Tシャツで頑張っていたけど、限界。
そこから少し行った中州に艇を寄せて降り、荷物の中からウィンドブレーカを着込む。
雨はサーと降り続けた。
風流な春雨なら濡れて参ろうとも思うかもしれないが、この逃げ場の無い雨はカンベン。
なにせ、ゴールの後は札幌までの孤独なドライブだ。
とにかく濡れるにしても、先を急ごうと思った。
近づくと逃げていくアオサギ、ぽつらぽつらと見える釣師。
この川をただひたすら漕いでいた。
ふと騒がしい岩壁。
見ると数え切れないほど多くの黒く小さな鳥が、川に浸食された地層部分に無数の穴を作り、寝床としている。
ツバメの類であろうか。
ボイジャー号と僕は、自然半分・人口工作物半分の環境をもくもくとすべっていった。
いくつの橋を越えてゆくのだろう。
コンスタントに漕ぎ進み、平原大橋、すずらん大橋を越える。
ついに帯広市のシンボルでもある十勝大橋が見えた。
遠くからこの橋が見えた時は、かなり感動した。
これだけ特徴的な橋を目の前にすると、少しドキドキ感が沸いてきた。
が、それもつかの間、その橋が文明的であればあるほど、橋の下側には冷たく辛く、その姿が映りこむ。
この頃、雨がやみ、雲の切れ間から青空がほんの少しのぞき、気温も上がってきた。
河畔林ごしに恐らく児童用の球場かグラウンドかあるのだろう、試合中の歓声が聞こえた。
うれしい。
僕はこの川を下ってきて、ひたすら寂しかったのだと気がついた。
川は幅を広げ、かつ深さも増し、とうとうと流れていた。
両岸の林から、鳥のきれいな鳴き声が聞こえる。
雲の切れ間から、太陽も顔を覗かせた。
この旅はもうすぐ終わる。
ガイドマップによると最後の瀬。
小さな波に、上下に揺られながら、軽く漕ぎ、なるべくゆっくり進むようにする。
ここへきて、ようやく川下りの楽しさを取り戻してきた。
もうすぐ十勝中央大橋、十勝川温泉。
ここに7年間をともにした愛車が待っているはず。
ゴールして、片付けたら、温泉に入ろう。
ゆっくり風呂に入ろう。
携帯はすでにつながらなくなっている。
何年かぶりに、公衆電話を使って心配してるはずの大奥さまにに連絡してみよう。
十勝川は札内川と合流した。
札内川も、それ自体川下りに適した大きさの川だ。
ますます川は大河化し流れた。
流されて、流れて、漕いで。
この二日間、僕は水の上で自由だった。
ただ、ちょっと技術が無く、ツイてなかった。
もうすぐゴールのこの時に、次の川のことを考えていた。
さすらおう この世界中を
ころがり続けてうたうよ 旅路の歌を
まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
風の先の終わりを見ていたらこうなった
雲の形を まにうけてしまった
さすらいの 道の途中で
会いたくなったらうたうよ 昔の歌を
人影見あたらぬ 終列車 一人飛び乗った
海の波の続きを見ていたらこうなった
胸のすきまに 入り込まれてしまった
誰のための 道しるべなんだった
それを もしも 無視したらどうなった
さすらいもしないで このまま死なねえぞ
さすらおう…
そして我がボイジャー号は、十勝中央大橋を越え、愛車イプサムの元へと到着した。
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北海道の川を旅する《十勝川06》 あとがき
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もし全て読んで頂いた方がいたのなら…
僕の自儘な紀行文に、おつきあい頂きありがとうございました。
この旅を、会社のエライさんに話したら、「お前は会社組織の人間なんだから」と自制を促されました。大笑
確かに後から考えると、よく生きて帰ってきたなとも思います。
でもね、統括支店長。
人には危険をおかす自由がね、あるはずなんですよ。笑
その統括支店長は、かつてヒグマと5メートル遭遇しているらしい。
僕の危険なんて、たいしたことないっすよ。
2008年10月19日
北海道の川を旅する 《十勝川06 6》
2006年07月30日00:52
出発
テントの周りを歩く足音で目が覚めた。
もう外は明るくなっている。
ゆうべ外で足首をブヨに何ヶ所も刺されてかなりかゆい。
しかし昨晩、焚き火をしながら何故か爪切りをし、ほとんどの指で深爪してしまい指先が痛くて使えない…
掻きたい時に掻けない辛さを初めて体験。
「何時だろう…」と思って携帯を確認するけど、水没した携帯は一応電源は入るものの時計すら表示する余力もないみたい。
通話とかメール機能はいらないけど、カメラが使えないのが痛い。
まぁいいか。別に時間なんて気にしなくてもいいし、時計を見るのをやめた。
テントから這い出してみる。
遠くに足音の主であろう、胴長をつけた釣り人がさおを振っている。
外はなんとも脱力する天気。
どんより低く立ち込めた雲に、無風。湿度も非常に高い。
しかし今日の漕行距離は20キロを越える。
「これでは楽しくないなぁ…」
なんて思いながら昨日買ってきたおにぎりを頬張り水を飲んだ。
雨にふられると。。
20キロを雨に濡れながら漕いでいくなんて、考えただけで気が滅入る。
しかしこの荷物をまとめてここから歩き出す気にはならない。
サッサと下ってしまうことにする。
テントをたたみ、パッキングする。
歯を磨いて、準備完了。
するとさきほどの釣師がやってきて、挨拶を交わした。
50歳前後だろうか。紳士的な感じの人だ。
釣師「ずいぶん重装備ですね」
餅「そうですねー、泊まるとなると大変です。笑」
釣師「どこまで行かれるんですか?」
餅「十勝川温泉まで行きます。5時間も漕げば着くでしょうか」
釣師「そんなにかからないんじゃないかな?流れも速いし」
餅「そうですか、ここから下は釣りする方は多いんですかね?」
釣師「けっこう多いと思いますよ。両側に人がいたりね。笑。特に早朝は。」
餅「でもこの天気なんでもう出ようと思ってるんですよ。釣師の方には邪魔ですよね、カヌー。笑」
釣師「でもこういうの通った後は、意外と掛かる事が多いんですよ。」
そして、湿ったままのボイジャー号は、早朝の十勝川を滑り始めた。
「気をつけて!」
ありがとうと釣師に会釈をして、さぁ、出発。
無感情
川は昨日と同じ、とうとうと流れた。
ところどころにゆるい瀬が現れる。
試しに漕ぎ入れるけど、昨日体験した迫り来る倒木の恐怖(おおげさ)の光景が目にチラついてイマイチ乗り切れない。
天気も相変わらず、どんよりしている。
時折り釣師の姿。
思っていたよりは少ない。
そして出会っても、「すみません通りますー」の一声をこっちからかけるだけで、無反応な釣師が多かった。
楽しいかどうか聞かれたら、正直楽しくはない。
下流に車を置いているからそこまで下る、という義務感に似たものしか、この時無かった。
こうなってくると楽しみは、橋を見上げる事ぐらいなもんだ。
この先2キロおきぐらいに橋が連続して架かる。
川下りをしていると、橋の下をくぐることはちょっとしたイベントだ。
橋脚や橋梁、構造体の部分を見上げる。
その姿は、決して美しくはないが、何千トンもの荷重がかかっているであろうその部分の強度を想像すると、うちに秘めたパワーを感じることができる。
高層ビルの1階に行く機会があれば、そこにある柱にかかる力を想像すると、似た感覚になることが出来るだろう。
順調に橋を越えて行く。
中州寄りの水中に、ニジマスの死骸を見つける。
そう言えばふだんの暮らしの中でも見かける鳥などの死骸は、ほとんど見たことが無いな。
彼らは一体、どこで死んで行くのだろう。
その亡き骸は、どこにあるのだろう。
川は士狩大橋を越えたあたりから見通しもよくなり、また十分な速さで流れている。
ゴーッという水の流れの音が聞こえると、その先には瀬や急流がある。
とある分流でその音を聞いた。
見通しが良いので早めに危険を察知できる。
倒木が障害となり、急流ができているところが何ヶ所かあった。
もちろんそういう所は、避けて通る。
ひっかかると大変だ。
川は深さも増してきていて、流されるとやっかいだ。
もう、沈はできないな。
出発
テントの周りを歩く足音で目が覚めた。
もう外は明るくなっている。
ゆうべ外で足首をブヨに何ヶ所も刺されてかなりかゆい。
しかし昨晩、焚き火をしながら何故か爪切りをし、ほとんどの指で深爪してしまい指先が痛くて使えない…
掻きたい時に掻けない辛さを初めて体験。
「何時だろう…」と思って携帯を確認するけど、水没した携帯は一応電源は入るものの時計すら表示する余力もないみたい。
通話とかメール機能はいらないけど、カメラが使えないのが痛い。
まぁいいか。別に時間なんて気にしなくてもいいし、時計を見るのをやめた。
テントから這い出してみる。
遠くに足音の主であろう、胴長をつけた釣り人がさおを振っている。
外はなんとも脱力する天気。
どんより低く立ち込めた雲に、無風。湿度も非常に高い。
しかし今日の漕行距離は20キロを越える。
「これでは楽しくないなぁ…」
なんて思いながら昨日買ってきたおにぎりを頬張り水を飲んだ。
雨にふられると。。
20キロを雨に濡れながら漕いでいくなんて、考えただけで気が滅入る。
しかしこの荷物をまとめてここから歩き出す気にはならない。
サッサと下ってしまうことにする。
テントをたたみ、パッキングする。
歯を磨いて、準備完了。
するとさきほどの釣師がやってきて、挨拶を交わした。
50歳前後だろうか。紳士的な感じの人だ。
釣師「ずいぶん重装備ですね」
餅「そうですねー、泊まるとなると大変です。笑」
釣師「どこまで行かれるんですか?」
餅「十勝川温泉まで行きます。5時間も漕げば着くでしょうか」
釣師「そんなにかからないんじゃないかな?流れも速いし」
餅「そうですか、ここから下は釣りする方は多いんですかね?」
釣師「けっこう多いと思いますよ。両側に人がいたりね。笑。特に早朝は。」
餅「でもこの天気なんでもう出ようと思ってるんですよ。釣師の方には邪魔ですよね、カヌー。笑」
釣師「でもこういうの通った後は、意外と掛かる事が多いんですよ。」
そして、湿ったままのボイジャー号は、早朝の十勝川を滑り始めた。
「気をつけて!」
ありがとうと釣師に会釈をして、さぁ、出発。
無感情
川は昨日と同じ、とうとうと流れた。
ところどころにゆるい瀬が現れる。
試しに漕ぎ入れるけど、昨日体験した迫り来る倒木の恐怖(おおげさ)の光景が目にチラついてイマイチ乗り切れない。
天気も相変わらず、どんよりしている。
時折り釣師の姿。
思っていたよりは少ない。
そして出会っても、「すみません通りますー」の一声をこっちからかけるだけで、無反応な釣師が多かった。
楽しいかどうか聞かれたら、正直楽しくはない。
下流に車を置いているからそこまで下る、という義務感に似たものしか、この時無かった。
こうなってくると楽しみは、橋を見上げる事ぐらいなもんだ。
この先2キロおきぐらいに橋が連続して架かる。
川下りをしていると、橋の下をくぐることはちょっとしたイベントだ。
橋脚や橋梁、構造体の部分を見上げる。
その姿は、決して美しくはないが、何千トンもの荷重がかかっているであろうその部分の強度を想像すると、うちに秘めたパワーを感じることができる。
高層ビルの1階に行く機会があれば、そこにある柱にかかる力を想像すると、似た感覚になることが出来るだろう。
順調に橋を越えて行く。
中州寄りの水中に、ニジマスの死骸を見つける。
そう言えばふだんの暮らしの中でも見かける鳥などの死骸は、ほとんど見たことが無いな。
彼らは一体、どこで死んで行くのだろう。
その亡き骸は、どこにあるのだろう。
川は士狩大橋を越えたあたりから見通しもよくなり、また十分な速さで流れている。
ゴーッという水の流れの音が聞こえると、その先には瀬や急流がある。
とある分流でその音を聞いた。
見通しが良いので早めに危険を察知できる。
倒木が障害となり、急流ができているところが何ヶ所かあった。
もちろんそういう所は、避けて通る。
ひっかかると大変だ。
川は深さも増してきていて、流されるとやっかいだ。
もう、沈はできないな。
2008年10月17日
北海道の川を旅する 《十勝川06 5》
2006年07月25日00:31
祥栄橋
祥栄橋はもうすぐそこに見えていた。
しかし、ここでひとつ問題が発生し、モタついていた。
「祥栄橋では左岸に上がるべし」と、ガイドブックにそうある。
しかし左岸は、河畔林がうっそうと続き、流心も左岸寄りで強く、見た感じ左岸に上がれるようなスペースは無い!
これは困った。
そして出した結論、「ガイドブックはミスプリだ。」
そうだと自分に言い聞かせ、静水エリアも豊富で、玉砂利の河原を形成している右岸に上陸。
一息ついた。
しかし問題は、ここから道路に上がれるのかどうかという事。
ひととおり荷物を艇から降ろし、テントも出す。
そしてさぁ、探索だ。
道路への上がり口を探していると、ものすごく悲しい事に気がついた。
上がり口が、ない。。水路によって分断されている。
「ここ、中洲じゃん…(T∀T)」
中州は、万一増水があった時、逃げ場を失い、艇を失い、命すら失いかねない。
心も体もクタクタの状態の僕は、最後のやる気を出し、もう一度荷物を入れ直し、艇を浮かべた。
そして、更なる右岸に艇をつけた。
橋の本当にたもとだ。
ふと見た向かい側の左岸には、橋脚の部分にわずか、コンクリートで護岸されている部分がある。
その上には確かに、いかにも便利そうな平地が見えた。
更にぐったりと疲れが僕を襲った。
ヨタヨタと、砂に小石が混じるポイントにテントを設営。
初めて、本来の役目を果たすソロテント。
艇をひっくり返して、道路に上がろう。
そしてガイドブックに載ってたローソンに買い物だ。
喉が渇いて渇いてしょーがない。
多少の藪漕ぎしてもいいさ。上がろう上がろう。
沈のために湿ったカネを持ち、濡れたままの服で河原を後にした。
しかし!!またまたここも水路で分断されている!!
オーマイガァーーーーー…(T∀T)
しかし、もう一度出直そうという気はもうすでに起こらなかった。
この時すでに18時。ヘトヘトである。
「常緑の中洲っぽいし、車の入った跡もある。なんとかなるさ…」
水路は深さ約20センチ程度、幅は2メーターぐらいで流れはチョロチョロ。
こうなったらジャバジャバ行くしかない。
浅い水路を渡り、堤防を登る。
ローソンまでは徒歩約15分だ。
ずぶ濡れの30代男がコンビニで買い物をしている姿…我ながら悲しい。
2リットルの水とビール、お茶と食料を買い込んだ。
店を出ると同時に水のキャップを開け、ペットボトルをラッパ飲み。
「うっまぁーーーーーー!!!」
水のありがたみがよくわかった瞬間、僕は500mlほどの水を一気に飲みこんだ。
今日は2時間程度しか寝ていないし、体もクタクタだ。
メシを食ってビールを飲んだら、爆睡してしまうだろう。
19時前。この季節、外はまだまだ明るい。
例の水路をバシャバシャやって、キャンプ地に戻った。
ポテトチップとビールをすごい勢いで腹に収める。
その後はテントに入って本を読んだ。
しかし、まったく眠くならない。
テントの中で2本目のビールを飲む。
そして、こぼす。。
もう、とことんツイてない日だと、ふて寝を決め込むがまったく眠くならない。
この近くに温泉があるらしいが、夜なのに水路を渡ってまた戻ってこなければならず、足が濡れると思うと、バカらしくてやめた。
雨がパラついてきた。
焚き火
パラついた雨は通り雨で、湿度だけを残して去って行った。
テントも蒸し暑くなってきた。
暗くなった気持ちを、更に悪化させる。
エアマットに横になりながら本を読む。
しかし、蒸し暑さで居心地が非常に悪い。
「あ、そうだ、焚き火しよう」
ここは中州で、流木は無尽蔵にある。
細めの枝を集めて来て、適当に石をよけて床を作った。
そこにライターで火をともす。
チロチロと、ゆっくり火がまわる。
やがて枝は、小さな炎に包まれた。
ゆっくり揺れながら燃えている。
僕はいつの間にか、この揺れる灯りに癒され始めていた。
とりあえず残りのビールを飲む。
時おり橋の上を車が通る音。
流れの音。
暮れてゆく太陽。
川の景色。
無性に淋しい。
誰かと話したい。
誰かに今日の出来事を聞いてもらいたい。
僕はこんな所で何をしているのだろう。
何を考えても変わらない、ちっぽけな思いがめぐっては消えてゆく。
またビールを飲む。
頭に思い浮かぶ歌を静かに口ずさむ。
焚き火の炎は、僕をやさしく照らしてくれている。
今夜は花火大会があるのだろう、遠くで花火が見えた。
気分はなんだか妙に盛り上がってきた。
もう一度酒を買いに行く。もちろん水に濡れるのは覚悟の上。
店から戻るともう花火は見えなくなっていた。
雲が厚くかかった空には星ひとつ見えない。
橋を照らすオレンジ色のナトリウムランプだけが、ここから見える灯りだ。
昔の事を思い出す。
学生時代。なぜその学校に入ったのだったろう。
そして今、なぜこの仕事をしているのだろう。
好きだった女の子のこと、叶わなかった先輩への恋心、出来事。
その時の事を思い出してはつぶやき…
近くに人がいたら、間違いなく危ない奴と思われただろう。
そんな、考えても何も変わらないこと、でも考えると妙に楽しいことを、焚き火に向かって延々と語っていた。
誰にも言えないような本音を、焚き火に全て打ち明けた。
きっと誰かが一緒だと、本音トークが始まったことだろうな。
0時。
いいだけ酒に酔っていた僕は、歯磨きをしてテントに入った。
その後の記憶は、すぐになくなってしまった。
祥栄橋
祥栄橋はもうすぐそこに見えていた。
しかし、ここでひとつ問題が発生し、モタついていた。
「祥栄橋では左岸に上がるべし」と、ガイドブックにそうある。
しかし左岸は、河畔林がうっそうと続き、流心も左岸寄りで強く、見た感じ左岸に上がれるようなスペースは無い!
これは困った。
そして出した結論、「ガイドブックはミスプリだ。」
そうだと自分に言い聞かせ、静水エリアも豊富で、玉砂利の河原を形成している右岸に上陸。
一息ついた。
しかし問題は、ここから道路に上がれるのかどうかという事。
ひととおり荷物を艇から降ろし、テントも出す。
そしてさぁ、探索だ。
道路への上がり口を探していると、ものすごく悲しい事に気がついた。
上がり口が、ない。。水路によって分断されている。
「ここ、中洲じゃん…(T∀T)」
中州は、万一増水があった時、逃げ場を失い、艇を失い、命すら失いかねない。
心も体もクタクタの状態の僕は、最後のやる気を出し、もう一度荷物を入れ直し、艇を浮かべた。
そして、更なる右岸に艇をつけた。
橋の本当にたもとだ。
ふと見た向かい側の左岸には、橋脚の部分にわずか、コンクリートで護岸されている部分がある。
その上には確かに、いかにも便利そうな平地が見えた。
更にぐったりと疲れが僕を襲った。
ヨタヨタと、砂に小石が混じるポイントにテントを設営。
初めて、本来の役目を果たすソロテント。
艇をひっくり返して、道路に上がろう。
そしてガイドブックに載ってたローソンに買い物だ。
喉が渇いて渇いてしょーがない。
多少の藪漕ぎしてもいいさ。上がろう上がろう。
沈のために湿ったカネを持ち、濡れたままの服で河原を後にした。
しかし!!またまたここも水路で分断されている!!
オーマイガァーーーーー…(T∀T)
しかし、もう一度出直そうという気はもうすでに起こらなかった。
この時すでに18時。ヘトヘトである。
「常緑の中洲っぽいし、車の入った跡もある。なんとかなるさ…」
水路は深さ約20センチ程度、幅は2メーターぐらいで流れはチョロチョロ。
こうなったらジャバジャバ行くしかない。
浅い水路を渡り、堤防を登る。
ローソンまでは徒歩約15分だ。
ずぶ濡れの30代男がコンビニで買い物をしている姿…我ながら悲しい。
2リットルの水とビール、お茶と食料を買い込んだ。
店を出ると同時に水のキャップを開け、ペットボトルをラッパ飲み。
「うっまぁーーーーーー!!!」
水のありがたみがよくわかった瞬間、僕は500mlほどの水を一気に飲みこんだ。
今日は2時間程度しか寝ていないし、体もクタクタだ。
メシを食ってビールを飲んだら、爆睡してしまうだろう。
19時前。この季節、外はまだまだ明るい。
例の水路をバシャバシャやって、キャンプ地に戻った。
ポテトチップとビールをすごい勢いで腹に収める。
その後はテントに入って本を読んだ。
しかし、まったく眠くならない。
テントの中で2本目のビールを飲む。
そして、こぼす。。
もう、とことんツイてない日だと、ふて寝を決め込むがまったく眠くならない。
この近くに温泉があるらしいが、夜なのに水路を渡ってまた戻ってこなければならず、足が濡れると思うと、バカらしくてやめた。
雨がパラついてきた。
焚き火
パラついた雨は通り雨で、湿度だけを残して去って行った。
テントも蒸し暑くなってきた。
暗くなった気持ちを、更に悪化させる。
エアマットに横になりながら本を読む。
しかし、蒸し暑さで居心地が非常に悪い。
「あ、そうだ、焚き火しよう」
ここは中州で、流木は無尽蔵にある。
細めの枝を集めて来て、適当に石をよけて床を作った。
チロチロと、ゆっくり火がまわる。
やがて枝は、小さな炎に包まれた。
ゆっくり揺れながら燃えている。
僕はいつの間にか、この揺れる灯りに癒され始めていた。
とりあえず残りのビールを飲む。
時おり橋の上を車が通る音。
流れの音。
暮れてゆく太陽。
川の景色。
無性に淋しい。
誰かと話したい。
誰かに今日の出来事を聞いてもらいたい。
僕はこんな所で何をしているのだろう。
何を考えても変わらない、ちっぽけな思いがめぐっては消えてゆく。
またビールを飲む。
頭に思い浮かぶ歌を静かに口ずさむ。
焚き火の炎は、僕をやさしく照らしてくれている。
今夜は花火大会があるのだろう、遠くで花火が見えた。
気分はなんだか妙に盛り上がってきた。
もう一度酒を買いに行く。もちろん水に濡れるのは覚悟の上。
店から戻るともう花火は見えなくなっていた。
雲が厚くかかった空には星ひとつ見えない。
橋を照らすオレンジ色のナトリウムランプだけが、ここから見える灯りだ。
昔の事を思い出す。
学生時代。なぜその学校に入ったのだったろう。
そして今、なぜこの仕事をしているのだろう。
好きだった女の子のこと、叶わなかった先輩への恋心、出来事。
その時の事を思い出してはつぶやき…
近くに人がいたら、間違いなく危ない奴と思われただろう。
そんな、考えても何も変わらないこと、でも考えると妙に楽しいことを、焚き火に向かって延々と語っていた。
誰にも言えないような本音を、焚き火に全て打ち明けた。
きっと誰かが一緒だと、本音トークが始まったことだろうな。
0時。
いいだけ酒に酔っていた僕は、歯磨きをしてテントに入った。
その後の記憶は、すぐになくなってしまった。
2008年10月16日
北海道の川を旅する 《十勝川06 4》
2006年07月22日16:34
祥栄橋までの出来事
沈をした後は、もちろん全身水浸し、コクピット内も一時浴槽状態になり全てが濡れ、もう何がどうとかこうとか一切なくなった!!
「いよっしゃぁ~、行くぞぅ!!!」
川下りの続きだ。
まだ多分、1キロぐらいしか進んでいない。
事前にgoogleサテライトで確認していた落ち込みが来た!
また沈しても同じ!オーライオーライ。
スカウティング(危険な流れの下見をすること)なしに突っ込む。
水中のテトラポットが、流れに数十センチ程度の落ち込みを作っていた。
バウ(フネの舳先側)デッキが一瞬波の中に。
次の瞬間、バウに当たって砕けた水しぶきがビシャビシャと顔に当たる。
「ウワッホォーイィ!」
おもしれぇ!!
続いて同じく水中のテトラが水面に波を作っている場所があったが、ここも瀬としては1級程度、フネの直進安定性を保ち漕ぎ抜ける。
陽の光が少し弱くなってきた。
おそらく4時過ぎ。
十勝川は、ガイドブックにも「流速が早い」と記されている。
確かに、去年下ったお気楽豊平川とろとろ下流域とは全く違う。
こちらは中流域、見た目の速度は恐らく小走り程度(7~8km/h)に見える。
ただ、ところどころ浅くなっており、ライニングダウン(艇から降り、艇を引っ張りながら浅瀬を歩くこと:すごくめんどくさく疲れる)を強いられる。
そのせいもあり、意外にも距離は来ていないのか。
川は、中州に流れを分断され、何本かに分かれて流れていた。
ふと何気なく、広い幅で流れる本流筋では、また浅瀬が出現してライニングダウン…の可能性がふと頭をよぎった。
川幅が狭くなった方には、木々で先は見えないがとうとうとした水の流れが見える。
「よし、狭いほうに行ってみるか」
カヌーの方向をそちらに定め、流れに入って行った。
蛇行した先で見た景色は…
今、思い出しても恐くなる、いや、今思い出すから恐くなる光景だった。
その水路は、川幅一杯に早い速度で流れており、流れによってえぐられたような両岸ではフネもつけられない。
もちろん止まることなんかできない。
その先には、倒木が3重にもなって川をほぼふさいでいた。
「わわわわっ!どうしようどうしよう!?!?」
流れは待ってくれない。
そのままの速度で、なんとかジタバタして1本目の倒木の切れ目を抜けた。
しかし、数メートル先にすぐに2本目が…
そして2本目とVの字になるように、3本目も横たわっている。
もうこうなってはいくら腕があろうとも(無いけどね)、自然の流れに身を任せるしかない。
最後にパドルで倒木を直接突いてダメージを弱めようとトライしてみたが、悲しいかな何の力にもならず、ボイジャー号は川の流れに押されるように、2本目の倒木に側面から衝突、そのまま水流によって木に貼り付いてしまった。
「ふーっ。ごめん。こんなルートを選んだ僕がバカだった」
ボイジャー号の側面には、倒木と衝突したダメージが残っていたが、船体布は破れてはいない。
そして幸いにも、ここの流れは意外と浅く、ひざ下ぐらいであったで、いったん降りてフネを立て直して抜ける事ができた。
それでもフネに当たる水流は強く、方向修正にかなりの時間を要した。
その場はなんとか脱出できたが、倒木が見えたあの光景は、僕をすっかり弱気にさせていた。
「ガイドブックに送電線が見えたら祥栄橋近しとあったな」と思い出す。
送電線が見えてくるのを、たよりなくパドリングしながらひたすら待った。
どれぐらいヨボヨボと漕いだだろう、ようやく、送電線が見えた。
あと1キロもすれば祥栄橋で上陸だ。
喉は渇ききり、お茶を流したあの沈を心から恨んだ。(笑)
移動のせいもあり、体はもうクタクタだった。
早く、早く、早く…
強く願うほど思いは叶わなくなるもので。。。。。。
祥栄橋までの出来事
沈をした後は、もちろん全身水浸し、コクピット内も一時浴槽状態になり全てが濡れ、もう何がどうとかこうとか一切なくなった!!
「いよっしゃぁ~、行くぞぅ!!!」
川下りの続きだ。
まだ多分、1キロぐらいしか進んでいない。
事前にgoogleサテライトで確認していた落ち込みが来た!
また沈しても同じ!オーライオーライ。
スカウティング(危険な流れの下見をすること)なしに突っ込む。
水中のテトラポットが、流れに数十センチ程度の落ち込みを作っていた。
バウ(フネの舳先側)デッキが一瞬波の中に。
次の瞬間、バウに当たって砕けた水しぶきがビシャビシャと顔に当たる。
「ウワッホォーイィ!」
おもしれぇ!!
続いて同じく水中のテトラが水面に波を作っている場所があったが、ここも瀬としては1級程度、フネの直進安定性を保ち漕ぎ抜ける。
陽の光が少し弱くなってきた。
おそらく4時過ぎ。
十勝川は、ガイドブックにも「流速が早い」と記されている。
確かに、去年下ったお気楽豊平川とろとろ下流域とは全く違う。
こちらは中流域、見た目の速度は恐らく小走り程度(7~8km/h)に見える。
ただ、ところどころ浅くなっており、ライニングダウン(艇から降り、艇を引っ張りながら浅瀬を歩くこと:すごくめんどくさく疲れる)を強いられる。
そのせいもあり、意外にも距離は来ていないのか。
川は、中州に流れを分断され、何本かに分かれて流れていた。
ふと何気なく、広い幅で流れる本流筋では、また浅瀬が出現してライニングダウン…の可能性がふと頭をよぎった。
川幅が狭くなった方には、木々で先は見えないがとうとうとした水の流れが見える。
「よし、狭いほうに行ってみるか」
カヌーの方向をそちらに定め、流れに入って行った。
蛇行した先で見た景色は…
今、思い出しても恐くなる、いや、今思い出すから恐くなる光景だった。
その水路は、川幅一杯に早い速度で流れており、流れによってえぐられたような両岸ではフネもつけられない。
もちろん止まることなんかできない。
その先には、倒木が3重にもなって川をほぼふさいでいた。
「わわわわっ!どうしようどうしよう!?!?」
流れは待ってくれない。
そのままの速度で、なんとかジタバタして1本目の倒木の切れ目を抜けた。
しかし、数メートル先にすぐに2本目が…
そして2本目とVの字になるように、3本目も横たわっている。
もうこうなってはいくら腕があろうとも(無いけどね)、自然の流れに身を任せるしかない。
最後にパドルで倒木を直接突いてダメージを弱めようとトライしてみたが、悲しいかな何の力にもならず、ボイジャー号は川の流れに押されるように、2本目の倒木に側面から衝突、そのまま水流によって木に貼り付いてしまった。
「ふーっ。ごめん。こんなルートを選んだ僕がバカだった」
ボイジャー号の側面には、倒木と衝突したダメージが残っていたが、船体布は破れてはいない。
そして幸いにも、ここの流れは意外と浅く、ひざ下ぐらいであったで、いったん降りてフネを立て直して抜ける事ができた。
それでもフネに当たる水流は強く、方向修正にかなりの時間を要した。
その場はなんとか脱出できたが、倒木が見えたあの光景は、僕をすっかり弱気にさせていた。
「ガイドブックに送電線が見えたら祥栄橋近しとあったな」と思い出す。
送電線が見えてくるのを、たよりなくパドリングしながらひたすら待った。
どれぐらいヨボヨボと漕いだだろう、ようやく、送電線が見えた。
あと1キロもすれば祥栄橋で上陸だ。
喉は渇ききり、お茶を流したあの沈を心から恨んだ。(笑)
移動のせいもあり、体はもうクタクタだった。
早く、早く、早く…
強く願うほど思いは叶わなくなるもので。。。。。。
