2008年10月19日
北海道の川を旅する 《十勝川06 7/E》
2006年08月02日23:33
さすらい
中島橋あたりから、ついに小雨が降ってきた。
それまでは半袖Tシャツで頑張っていたけど、限界。
そこから少し行った中州に艇を寄せて降り、荷物の中からウィンドブレーカを着込む。
雨はサーと降り続けた。
風流な春雨なら濡れて参ろうとも思うかもしれないが、この逃げ場の無い雨はカンベン。
なにせ、ゴールの後は札幌までの孤独なドライブだ。
とにかく濡れるにしても、先を急ごうと思った。
近づくと逃げていくアオサギ、ぽつらぽつらと見える釣師。
この川をただひたすら漕いでいた。
ふと騒がしい岩壁。
見ると数え切れないほど多くの黒く小さな鳥が、川に浸食された地層部分に無数の穴を作り、寝床としている。
ツバメの類であろうか。
ボイジャー号と僕は、自然半分・人口工作物半分の環境をもくもくとすべっていった。
いくつの橋を越えてゆくのだろう。
コンスタントに漕ぎ進み、平原大橋、すずらん大橋を越える。
ついに帯広市のシンボルでもある十勝大橋が見えた。
遠くからこの橋が見えた時は、かなり感動した。
これだけ特徴的な橋を目の前にすると、少しドキドキ感が沸いてきた。
が、それもつかの間、その橋が文明的であればあるほど、橋の下側には冷たく辛く、その姿が映りこむ。
この頃、雨がやみ、雲の切れ間から青空がほんの少しのぞき、気温も上がってきた。
河畔林ごしに恐らく児童用の球場かグラウンドかあるのだろう、試合中の歓声が聞こえた。
うれしい。
僕はこの川を下ってきて、ひたすら寂しかったのだと気がついた。
川は幅を広げ、かつ深さも増し、とうとうと流れていた。
両岸の林から、鳥のきれいな鳴き声が聞こえる。
雲の切れ間から、太陽も顔を覗かせた。
この旅はもうすぐ終わる。
ガイドマップによると最後の瀬。
小さな波に、上下に揺られながら、軽く漕ぎ、なるべくゆっくり進むようにする。
ここへきて、ようやく川下りの楽しさを取り戻してきた。
もうすぐ十勝中央大橋、十勝川温泉。
ここに7年間をともにした愛車が待っているはず。
ゴールして、片付けたら、温泉に入ろう。
ゆっくり風呂に入ろう。
携帯はすでにつながらなくなっている。
何年かぶりに、公衆電話を使って心配してるはずの大奥さまにに連絡してみよう。
十勝川は札内川と合流した。
札内川も、それ自体川下りに適した大きさの川だ。
ますます川は大河化し流れた。
流されて、流れて、漕いで。
この二日間、僕は水の上で自由だった。
ただ、ちょっと技術が無く、ツイてなかった。
もうすぐゴールのこの時に、次の川のことを考えていた。
さすらおう この世界中を
ころがり続けてうたうよ 旅路の歌を
まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
風の先の終わりを見ていたらこうなった
雲の形を まにうけてしまった
さすらいの 道の途中で
会いたくなったらうたうよ 昔の歌を
人影見あたらぬ 終列車 一人飛び乗った
海の波の続きを見ていたらこうなった
胸のすきまに 入り込まれてしまった
誰のための 道しるべなんだった
それを もしも 無視したらどうなった
さすらいもしないで このまま死なねえぞ
さすらおう…
そして我がボイジャー号は、十勝中央大橋を越え、愛車イプサムの元へと到着した。
******************************************
北海道の川を旅する《十勝川06》 あとがき
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もし全て読んで頂いた方がいたのなら…
僕の自儘な紀行文に、おつきあい頂きありがとうございました。
この旅を、会社のエライさんに話したら、「お前は会社組織の人間なんだから」と自制を促されました。大笑
確かに後から考えると、よく生きて帰ってきたなとも思います。
でもね、統括支店長。
人には危険をおかす自由がね、あるはずなんですよ。笑
その統括支店長は、かつてヒグマと5メートル遭遇しているらしい。
僕の危険なんて、たいしたことないっすよ。
さすらい
中島橋あたりから、ついに小雨が降ってきた。
それまでは半袖Tシャツで頑張っていたけど、限界。
そこから少し行った中州に艇を寄せて降り、荷物の中からウィンドブレーカを着込む。
雨はサーと降り続けた。
風流な春雨なら濡れて参ろうとも思うかもしれないが、この逃げ場の無い雨はカンベン。
なにせ、ゴールの後は札幌までの孤独なドライブだ。
とにかく濡れるにしても、先を急ごうと思った。
近づくと逃げていくアオサギ、ぽつらぽつらと見える釣師。
この川をただひたすら漕いでいた。
ふと騒がしい岩壁。
見ると数え切れないほど多くの黒く小さな鳥が、川に浸食された地層部分に無数の穴を作り、寝床としている。
ツバメの類であろうか。
ボイジャー号と僕は、自然半分・人口工作物半分の環境をもくもくとすべっていった。
いくつの橋を越えてゆくのだろう。
コンスタントに漕ぎ進み、平原大橋、すずらん大橋を越える。
ついに帯広市のシンボルでもある十勝大橋が見えた。
遠くからこの橋が見えた時は、かなり感動した。
これだけ特徴的な橋を目の前にすると、少しドキドキ感が沸いてきた。
が、それもつかの間、その橋が文明的であればあるほど、橋の下側には冷たく辛く、その姿が映りこむ。
この頃、雨がやみ、雲の切れ間から青空がほんの少しのぞき、気温も上がってきた。
河畔林ごしに恐らく児童用の球場かグラウンドかあるのだろう、試合中の歓声が聞こえた。
うれしい。
僕はこの川を下ってきて、ひたすら寂しかったのだと気がついた。
川は幅を広げ、かつ深さも増し、とうとうと流れていた。
両岸の林から、鳥のきれいな鳴き声が聞こえる。
雲の切れ間から、太陽も顔を覗かせた。
この旅はもうすぐ終わる。
ガイドマップによると最後の瀬。
小さな波に、上下に揺られながら、軽く漕ぎ、なるべくゆっくり進むようにする。
ここへきて、ようやく川下りの楽しさを取り戻してきた。
もうすぐ十勝中央大橋、十勝川温泉。
ここに7年間をともにした愛車が待っているはず。
ゴールして、片付けたら、温泉に入ろう。
ゆっくり風呂に入ろう。
携帯はすでにつながらなくなっている。
何年かぶりに、公衆電話を使って心配してるはずの大奥さまにに連絡してみよう。
十勝川は札内川と合流した。
札内川も、それ自体川下りに適した大きさの川だ。
ますます川は大河化し流れた。
流されて、流れて、漕いで。
この二日間、僕は水の上で自由だった。
ただ、ちょっと技術が無く、ツイてなかった。
もうすぐゴールのこの時に、次の川のことを考えていた。
さすらおう この世界中を
ころがり続けてうたうよ 旅路の歌を
まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
風の先の終わりを見ていたらこうなった
雲の形を まにうけてしまった
さすらいの 道の途中で
会いたくなったらうたうよ 昔の歌を
人影見あたらぬ 終列車 一人飛び乗った
海の波の続きを見ていたらこうなった
胸のすきまに 入り込まれてしまった
誰のための 道しるべなんだった
それを もしも 無視したらどうなった
さすらいもしないで このまま死なねえぞ
さすらおう…
そして我がボイジャー号は、十勝中央大橋を越え、愛車イプサムの元へと到着した。
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北海道の川を旅する《十勝川06》 あとがき
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もし全て読んで頂いた方がいたのなら…
僕の自儘な紀行文に、おつきあい頂きありがとうございました。
この旅を、会社のエライさんに話したら、「お前は会社組織の人間なんだから」と自制を促されました。大笑
確かに後から考えると、よく生きて帰ってきたなとも思います。
でもね、統括支店長。
人には危険をおかす自由がね、あるはずなんですよ。笑
その統括支店長は、かつてヒグマと5メートル遭遇しているらしい。
僕の危険なんて、たいしたことないっすよ。
北海道の川を旅する 《十勝川06 6》
北海道の川を旅する 《十勝川06 5》
北海道の川を旅する 《十勝川06 4》
北海道の川を旅する 《十勝川06 3》
北海道の川を旅する 《十勝川06 2》
北海道の川を旅する 《十勝川06 1》
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Posted by 餅 at 21:17│Comments(0)
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