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2009年11月03日

北海道の川を旅する《歴舟川 9/E》

 ゴール。太平洋

ついに、ここまで来た。
波の音が轟く。
今までとうとうと流れていた歴舟川も、ついに流速が落ちる。
陸からの河岸の景色になんとなく見覚えがある。

 「この場所で間違いないんだ…」

知らない道を通った後に見慣れた場所が見えたとき、『あ、ここに出るんだ』と思う感覚と同じだ。

しかし、違う。
明らかに違うことがある。
その違いに、僕は早くも恐れをなしていた。

あのキラキラした美しい河口はどこへ!?
太平洋が、怒っている。

恐ろしいほどの高波が、河口から逆流を作っているではないか!!

 北海道の川を旅する《歴舟川 9/E》


 「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ( ̄◇ ̄;;;;;;;!!!!!」

恐い!ものすごく恐い!
夕べの熊の心配ごとき恐ろしさの比ではない!

ただ、ゴールを決めていた場所に向かうには、この河口をかすめて左へ、左へと進まねばならない。
当然、カヌーは横っ腹を海に向けなければならないわけで…

さっきまで考えていた、"感動・感激のゴール"はこの時、一切頭には無かった。

 「生きて戻らねば…」

頭には、それしかなかった。

河口に作られたプール。
歴舟が作ったプールである。
僕は、その歴舟に守られながら、心細く左岸を目指した。

 北海道の川を旅する《歴舟川 9/E》

太平洋はさしずめ、アル中の暴力親父(しかも再婚ね)である。
歴舟川は、病弱ながら暴力に耐えている母親だ。
この頼りないほど小さい小舟に乗った子を、必死に守ってくれている。
このプールは母親の腕の中なのだ。

 北海道の川を旅する《歴舟川 9/E》

親父の暴力はますます猛威をふるう。
僕は母親に守られながら逃げ口をうろたえながら探している。

いいだけ進んだ左岸限界エリアに、ようやくフネをつけられるポイントを見つけた。
一昨日下見した時に感激した、透明なプールはウソのように濁っていた。
高い波によってあわ立ち、流木がゴロゴロと浮いている。
そこをボイジャーの舳先が割って入る。
パドルが流木に当たって思うように進めない。
波が砂丘を越えて押し寄せる!

 「ヒィィィィッ!!!!」

泣きそうになりながらなんとか岸にたどりついた。
しかしこのままでは太平洋のパンチにKOされる!
あせる。
とにかくあせる。
早く降りなくては!
慌ててカヌーから出ると、

  ドボン!!

岸はドン深になっていて、汚い水の中、足がつかない。
さらにあせる!
泡と木くずまみれになってもがきながら上陸、すぐさまボイジャーをたぐり寄せる。
その間にも親父の怒鳴る声が響き渡る。

  ゴゴゴォォォーーーーッ…

もうホントに泣きそうだ。
砂丘を越えてきた海水が、足元を流れる。
波高は、恐怖も手伝ってか3メーターぐらいに見える。

 「もうやだ~~~…」

まずは積んでいた荷物を取り出して、全力で浜の小高くなっている場所目指して走る。
次はボイジャーだ!

 北海道の川を旅する《歴舟川 9/E》

 「待ってろ、今助けるからな!」

なんて言いながら写真を撮ってる僕。
ネタ魂としか言いようが無い。

ボイジャー救出成功。
ここまで終えて、やっと一息つく。

さすがにここまでは波も届かないだろう。

ひとまず荷物を持ってクルマの元へ。
最後の最後にびしょ濡れ、小汚くなった全身。
一式着替えをした。

ボイジャーを乾かしながら解体する。
着替えをしているうちに、波は更に高くなった。

 北海道の川を旅する《歴舟川 9/E》

解体作業している場所の3メーター先にまで波が押し寄せるようになってきたが、もう、こっちのもんだ。


歴舟川の川旅は、激しい家庭内暴力のような絵の中で終了した。
全てを終えると、やっと満足感が出てくる。
しかし、温かい服を着ても、クルマを走らせても、しばらく恐怖は納まらなかった。

なんだかこの川旅。
逃げ帰るような川旅。

来年なら、たとえ海が荒れていても、もうちょっと余裕を持てるだろうか。

出発点にデポジットした折りたたみチャリを拾い、僕はクルマを札幌へと走らせた。


 - 完 -


***********************************************
北海道の川を旅する《歴舟川》 あとがき
***********************************************
物事の印象というのは、第一印象から始まって事後に思い出して考える印象まであります。
歴舟川。『なんか、ちょっと恐い』
しかしながら、道中は愉快で爽快で仕方なかったのです。
その証拠に、帰宅後に顔をよ~く見てみたら…
顔の日焼け、目尻の笑いジワによってシマシマ模様となっておりました。
100%楽しめる歴舟を夢見て、来年もまた、この川を下るんだろうなぁ。
僕の腕にはちょうどいい、そんなに激しくない美しい川でした。

成績:ノー沈、2回ドボン。

この翌日から、舞台を積丹の海に移して、僕はシーカヤックで遊んでくることになるのです。

旅、遊び、大好き!!(^◇^)


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この記事へのコメント
良い旅をしましたね~。
歴舟川河口に一泊したときのことを思い出しました。爆裂するうねりに恐れおののき、身も心も疲れ果てた一夜。翌朝ファルトを担いで河口から数キロ離れたバス停までとぼとぼと歩いたのですが、どこまでも続く爆裂の海岸線に更に打ちのめされました。シーカヤックなんて一生乗らんぞ。しかし何故か今はシーカヤックにどっぷりはまっていたりします。
餅さんも同じ道を歩むのかな?
Posted by Iwao at 2009年11月03日 11:57
Iwaoさん
コメントありがとうございます!
最後が最後だっただけに、若干辛かった気がしますが、素晴らしい川の素晴らしい旅でした。
そうでしたか…
あの河口、荒れた太平洋を目前にキャンプしたんですねぇ(涙)
疲労度お察ししますよ(笑)

それほどウンザリした経験を持ちながら、今やそれが職業ですもんね!

僕は。
どこへ行こうかな…
Posted by 餅 at 2009年11月04日 08:11
オハヨウゴザイマス

お疲れさまでした!
今回も楽しく読ませて頂きました。
特にこの回は笑わせていただきましたよ〜(失礼)

自らドボンした後に足がつかないってのは、
最高の恐怖ですね( ̄□ ̄;)!!
しかも単身ですし...

初日にこの波を見ていたら、
川を下れなかったでしょう?
熊より恐い太平洋(しかも再婚) (爆)

後から来るであろう、例の親子はどーなったんだろ?
Posted by ちん婆ちん婆 at 2009年11月06日 03:16
ちん婆さん~(;_;)
こわかったよぉ~(笑)
長らくお付き合い、ありがとうございました!
でもねぇ~…単独行はやめられないです。
全てが自己責任。
むしろそれが気楽なんですよね、僕にとっては。


>初日にこの波を見ていたら、
>川を下れなかったでしょう?

イ、イエス…もう少し上でのゴールを設定していたはず。
海に対しては単なる無知な人間なんで、海が漠然と怖いんですよ。
でも、川から海を見たかったんです。あわよくば海に出てやろうと目論んでましたからね!

ホント、Aさん親子はどうしたかな。
海況がおだやかだった事を祈ってますが…
今や知る術もなく。


さぁ、川下りはまた来年です!
イキナリ平岸水軍関東デビューのウワサ!イ・バ・ラ・キー☆の那珂川~か久慈川~☆

かな?
Posted by 餅 at 2009年11月06日 22:22
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