2012年04月21日
四国の川を旅する《四万十川 01》
プロローグ
4月9日月曜日。
僕は肩に食い込む20kgの荷物を背負って、早くもバテ気味に新千歳空港のスカイマークエアラインチェックインカウンターを目指していた。
ひとまず千歳から飛ぶ先は神戸。
その先はまだ僕の知らない土地、四国、高知が待っている。
平岸水軍の北海道外初出張、本来なら期待に胸が高鳴っていてすでにニヤ顔でいるはずなのだが、この旅の出発はいつもと少し違い素直に笑顔になれていない自分がいた。
3月に仕事を辞めた。
勤務わずか6年少々。
採用時、僕は”専門職採用”的な枠で入社し、自身の意思とも方向性の合った技術的な内容の業務をこなしていた。
それがこの2年間は理解できないコンバートを強いられ、本来であればもう人を指導しなければならない立場にいたものを、全く畑違いの内容で2年生3年生と同じ仕事を、更に彼らに聞きながらの屈辱的な仕事を行ってきた。
その延長線上で転勤を命じられた。
やりきれない思いをずっと抱きながら限界ギリギリの線に2年間いたけれど、もう我慢できなかった。
精神の健康上、それはすべきではなかったと思っている。
有難いことに、今回の退社に際してラブコールをくれた会社がいくつか有り、決断を加速させた。
結局僕は転勤の辞令を断り、退社に至った。
―会社を辞める― その決意をした時に、ふと休暇の事が頭に浮かんだ。
「長期休暇を作ることができるな…」
そう思ったら、すぐさま頭にカヌーイストの聖地”四万十川”が頭に浮かんだ。
そして四万十川を目指すべく、周りの人に話したり資料を集めて調べたり、装備を補強したりして準備を行ってきた。
ありがたい言葉を送ってくれた方がいた。
「人は必要とされる場所に呼ばれて行くのだと思います」
僕はこの言葉にずいぶんと助けられ、勇気をもらった。
勤めていた会社の、心許せる仲間のことも頭によぎる。
ある人は僕の転勤辞令に関して怒り、ある人は自分は関係ないのに「申し訳ない」と俯いて謝ってくれた。
とにかく。
大好きな人たちがたくさん住む札幌。
行ってくる・・・
必ず帰って来なければ。
そんな思いとは裏腹に、漠然と何か大切なものを失くしてしまう予感めいたものが心の中にあった。
札幌から新千歳空港までのバスの中、そんなことを思い起こしては、ひそかに泣いてしまった事はここでしか明かさない。
バスの車窓から見える、どこかいじけたような薄暗い雪景色は、哀愁の感情を増長させる。
「俺はどうなってしまうんだろう…」
漠然とした不安に包まれたまま、バスは新千歳空港に到着した。
初めての四国、初めての長期滞在。
不安がないわけはない。
だいたいにして、うまいもの食べ歩き名所めぐり一人旅ではない。
こんな一人旅にはむしろ悲壮感があっていいではないか。
恐らくこの旅は僕にとってスロースタートだ。
確信はあった。
平岸水軍は、南国の力で必ず蘇生するはずである。
よし。
行くぞ高知へ!出発だ。
帰りの予定を決めてしまうのを嫌って、”行き”だけのチケットしか予約していない。
こんな旅の形を実現できるのも恐らく今回限りだろう。
4月に入ったと言うのに札幌では毎日雪が降っている。
春なのに心を卑屈にさせる雪とはサラバなのだ。
ひとまず神戸を目指す。
神戸はある程度土地勘もあり、景色も見慣れている。
従って神戸から先が、未知への突入になるのだ。
人生初四国。初高知。
川下ラー憧れの、カヌーの聖地、四万十川。
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4月9日月曜日。
僕は肩に食い込む20kgの荷物を背負って、早くもバテ気味に新千歳空港のスカイマークエアラインチェックインカウンターを目指していた。
ひとまず千歳から飛ぶ先は神戸。
その先はまだ僕の知らない土地、四国、高知が待っている。
平岸水軍の北海道外初出張、本来なら期待に胸が高鳴っていてすでにニヤ顔でいるはずなのだが、この旅の出発はいつもと少し違い素直に笑顔になれていない自分がいた。
3月に仕事を辞めた。
勤務わずか6年少々。
採用時、僕は”専門職採用”的な枠で入社し、自身の意思とも方向性の合った技術的な内容の業務をこなしていた。
それがこの2年間は理解できないコンバートを強いられ、本来であればもう人を指導しなければならない立場にいたものを、全く畑違いの内容で2年生3年生と同じ仕事を、更に彼らに聞きながらの屈辱的な仕事を行ってきた。
その延長線上で転勤を命じられた。
やりきれない思いをずっと抱きながら限界ギリギリの線に2年間いたけれど、もう我慢できなかった。
精神の健康上、それはすべきではなかったと思っている。
有難いことに、今回の退社に際してラブコールをくれた会社がいくつか有り、決断を加速させた。
結局僕は転勤の辞令を断り、退社に至った。
―会社を辞める― その決意をした時に、ふと休暇の事が頭に浮かんだ。
「長期休暇を作ることができるな…」
そう思ったら、すぐさま頭にカヌーイストの聖地”四万十川”が頭に浮かんだ。
そして四万十川を目指すべく、周りの人に話したり資料を集めて調べたり、装備を補強したりして準備を行ってきた。
ありがたい言葉を送ってくれた方がいた。
「人は必要とされる場所に呼ばれて行くのだと思います」
僕はこの言葉にずいぶんと助けられ、勇気をもらった。
勤めていた会社の、心許せる仲間のことも頭によぎる。
ある人は僕の転勤辞令に関して怒り、ある人は自分は関係ないのに「申し訳ない」と俯いて謝ってくれた。
とにかく。
大好きな人たちがたくさん住む札幌。
行ってくる・・・
必ず帰って来なければ。
そんな思いとは裏腹に、漠然と何か大切なものを失くしてしまう予感めいたものが心の中にあった。
札幌から新千歳空港までのバスの中、そんなことを思い起こしては、ひそかに泣いてしまった事はここでしか明かさない。
バスの車窓から見える、どこかいじけたような薄暗い雪景色は、哀愁の感情を増長させる。
「俺はどうなってしまうんだろう…」
漠然とした不安に包まれたまま、バスは新千歳空港に到着した。
初めての四国、初めての長期滞在。
不安がないわけはない。
だいたいにして、うまいもの食べ歩き名所めぐり一人旅ではない。
こんな一人旅にはむしろ悲壮感があっていいではないか。
恐らくこの旅は僕にとってスロースタートだ。
確信はあった。
平岸水軍は、南国の力で必ず蘇生するはずである。
よし。
行くぞ高知へ!出発だ。
帰りの予定を決めてしまうのを嫌って、”行き”だけのチケットしか予約していない。
こんな旅の形を実現できるのも恐らく今回限りだろう。
4月に入ったと言うのに札幌では毎日雪が降っている。
春なのに心を卑屈にさせる雪とはサラバなのだ。
ひとまず神戸を目指す。
神戸はある程度土地勘もあり、景色も見慣れている。
従って神戸から先が、未知への突入になるのだ。
人生初四国。初高知。
川下ラー憧れの、カヌーの聖地、四万十川。
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