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2010年09月29日

北海道の川を旅する《2010年の十勝川 2》

しかし濁り水は恐い。
水面下がどんな状態であるのかわからない。
これから先、水面の変化だけで下の状況を読まなければならないのだ。
のんびりツーリングとは、とてもじゃないがならないのである。

川の防災情報で確認した情報ではそんなに水位は高くないはずであったが、まだ増水は収まりきっていないようだ。
水辺に生えた雑草の根本はどっぷりと川水に浸かっており、本来あるはずの岸が見えない。

だが水の量は少し多いようでも、流れ自体は増水して渦を巻いているような凶悪さはない。
ただ、豪雨による激流に運ばれたのであろう、水面には太い幹の木があちこちに散らばり存在している。
それらの流木には、まだ青々とした葉が茂っていた。
更にこれらの流木には、これもまた流されてきたのであろう枝がわんさか張り付いており、ビーバーダム状の塊を形作っている。


十勝川中流は元々分流が非常に多いルートである。
これら分流の始まるポイントには例外なくさきほどのビーバーダムが存在している。
流れの速度が速い十勝川である。
それら障害物をよけながら、慎重な判断と忙しいパドリングが続く。
流れのパワーが大きい分、僕の両腕も忙しく回る。
たびたび現れる瀬に対応する。
この流れの中では、写真をとろうと思っている間にあれよあれよと流されてしまう。

十勝川では、過去に分流の選択を誤り、折り重なった倒木によってとんでもない目にあったこともある。

道央自動車道を通す十勝川橋の少し下流側で、一段と激しい轟音が聞こえてきた。
遠くからでも白い波頭が確認できる。

 「うわっ、高いぞ…((・・;))」

確実に、今まで僕がボイジャーで越えた事のないレベルの瀬の出現である。

しかし都合の良いことに、この瀬の左岸には小砂利の川原が存在していた。
スカウティングに好都合である。

その川原にいったん上陸し、瀬を眺めながら昼飯を食うことにした。

 セルフタイマーでセミヌード☆

距離は決して長くは無いが、見れば見るほど恐怖心がわいてくる波の高さである。

 北海道の川を旅する《2010年の十勝川 2》

くそう、なんで写真にしたらチャチな瀬にしか見えないんだろう!
波のトップとボトムでは、1メーターほどの落差がある。
しかし真正面から突っ込んで波の一番高いところを真っ直ぐに行けば、クリアできそうな気もする。
気をつけなければならないのは、絶対に右岸寄りに流されないこと。
右岸は柔らかい岩盤と思われ、アンダーロックカットが不気味に待ち受けている。
沈はそれこそ命取りになり、許されない。
僕がいるこの川原、左岸側はチキンルートになっていて安全に下れそうであるが、そこを行くのはプライドと性格が許さない。

闘いてぇ!!!

心に火がついた!!
ビールとおにぎりの昼食を済ませ、ふたたびボイジャーに乗り込む。

 「よっしゃ行こうぜ、勝ったるぜ!!!」

両手で頬を強く叩き、気合を入れる。こんなことをするのも川下りを始めてから初の体験だ。
自分のウデを信じて、勝負だ。

できるだけ長く助走をつけるために岸沿いのエディを漕ぎ上がる。
だが、エディもこんな時に限って弱々しく、思うように上がれない。
スタート時と同じだ。
おそらく、どこから漕ぎ出しても、今日の十勝川はストリームインの助走を許してくれるほど甘くないようだ。

しかしこの瀬に対して横向きで入るのは絶対に避けたい。
猛烈なターンで方向修正し、瀬に入る直前でしっかりとバウを垂直にした。
ラッキーなことに、思ったコースに入ることが出来た。
瀬の中で操船するためには、水の流れを上回るスピードを保つ必要がある。
あせりながらのパドリングが続く。

ザブン!!

 「来た!オリャァッ!!!!」

ウェーブのトップを一つ越えようとするたびに、バウが波に突っ込んでコクピットに川水が大量に入ってくる!!

 「あぁ、スプレースカート持って来たらよかったなぁ…」

などとのんびりした思いが浮かぶが、今は闘わなければならない時だ。

ザブン!!!ザブン!!!

ザッブーン!!!!


 「あッ!!!」

波頭をかくことを意識してパドルを入れていたがリズムが崩れ、艇が波と波の間で持ち上げられた時にパドルが水面に届かずにスカッと空振りだ。
あっと言う間に瀬のペースに持ち込まれてしまう。

 「クッ…クソッ!」

何とかパドルは次の波頭をキャッチ。
歯を食いしばっての闘いが続く。
アドレナリンが出まくっている!

フネ自体が飲み込まれそうな高い波が見えた。
この瀬で一番デカい大将だ!!
これを超えれば比較的おだやかな流れを確認している。

大量の水をかぶり、大将のフェイスを滑り降り、おそらく3級レベルと思われる瀬との闘いは終わった。
汗は水で流れていただろうが、全身のびっしょり感は冷や汗によるものも大きいだろう。

とにかく、ファルトボートである。
のんびりツーリングを身上としているフネと、その心意気を継承しつつ飲酒堕落漕行のエッセンスを多分に含んでいる僕にはかなり厳しい瀬であった。

ゆったりと川下りを楽しむ…これはこの時、一切感じ取れなかったし、そんな余裕は無かった。


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