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2008年10月17日

北海道の川を旅する 《十勝川06 5》

2006年07月25日00:31

祥栄橋

祥栄橋はもうすぐそこに見えていた。
しかし、ここでひとつ問題が発生し、モタついていた。
「祥栄橋では左岸に上がるべし」と、ガイドブックにそうある。
しかし左岸は、河畔林がうっそうと続き、流心も左岸寄りで強く、見た感じ左岸に上がれるようなスペースは無い!
これは困った。
そして出した結論、「ガイドブックはミスプリだ。」
そうだと自分に言い聞かせ、静水エリアも豊富で、玉砂利の河原を形成している右岸に上陸。
一息ついた。
しかし問題は、ここから道路に上がれるのかどうかという事。
ひととおり荷物を艇から降ろし、テントも出す。
そしてさぁ、探索だ。
道路への上がり口を探していると、ものすごく悲しい事に気がついた。
上がり口が、ない。。水路によって分断されている。

 「ここ、中洲じゃん…(T∀T)」

中州は、万一増水があった時、逃げ場を失い、艇を失い、命すら失いかねない。
心も体もクタクタの状態の僕は、最後のやる気を出し、もう一度荷物を入れ直し、艇を浮かべた。
そして、更なる右岸に艇をつけた。

橋の本当にたもとだ。
ふと見た向かい側の左岸には、橋脚の部分にわずか、コンクリートで護岸されている部分がある。
その上には確かに、いかにも便利そうな平地が見えた。
更にぐったりと疲れが僕を襲った。
ヨタヨタと、砂に小石が混じるポイントにテントを設営。
初めて、本来の役目を果たすソロテント。
艇をひっくり返して、道路に上がろう。
そしてガイドブックに載ってたローソンに買い物だ。
喉が渇いて渇いてしょーがない。
多少の藪漕ぎしてもいいさ。上がろう上がろう。
沈のために湿ったカネを持ち、濡れたままの服で河原を後にした。
しかし!!またまたここも水路で分断されている!!
オーマイガァーーーーー…(T∀T)
しかし、もう一度出直そうという気はもうすでに起こらなかった。
この時すでに18時。ヘトヘトである。
「常緑の中洲っぽいし、車の入った跡もある。なんとかなるさ…」
水路は深さ約20センチ程度、幅は2メーターぐらいで流れはチョロチョロ。
こうなったらジャバジャバ行くしかない。
浅い水路を渡り、堤防を登る。
ローソンまでは徒歩約15分だ。
ずぶ濡れの30代男がコンビニで買い物をしている姿…我ながら悲しい。
2リットルの水とビール、お茶と食料を買い込んだ。
店を出ると同時に水のキャップを開け、ペットボトルをラッパ飲み。

 「うっまぁーーーーーー!!!」

水のありがたみがよくわかった瞬間、僕は500mlほどの水を一気に飲みこんだ。
今日は2時間程度しか寝ていないし、体もクタクタだ。
メシを食ってビールを飲んだら、爆睡してしまうだろう。
19時前。この季節、外はまだまだ明るい。
例の水路をバシャバシャやって、キャンプ地に戻った。
ポテトチップとビールをすごい勢いで腹に収める。
その後はテントに入って本を読んだ。
しかし、まったく眠くならない。
テントの中で2本目のビールを飲む。
そして、こぼす。。
もう、とことんツイてない日だと、ふて寝を決め込むがまったく眠くならない。
この近くに温泉があるらしいが、夜なのに水路を渡ってまた戻ってこなければならず、足が濡れると思うと、バカらしくてやめた。
雨がパラついてきた。


 焚き火

パラついた雨は通り雨で、湿度だけを残して去って行った。
テントも蒸し暑くなってきた。
暗くなった気持ちを、更に悪化させる。
エアマットに横になりながら本を読む。
しかし、蒸し暑さで居心地が非常に悪い。

 「あ、そうだ、焚き火しよう」

ここは中州で、流木は無尽蔵にある。
細めの枝を集めて来て、適当に石をよけて床を作った。
北海道の川を旅する 《十勝川06 5》そこにライターで火をともす。
チロチロと、ゆっくり火がまわる。
やがて枝は、小さな炎に包まれた。

ゆっくり揺れながら燃えている。
僕はいつの間にか、この揺れる灯りに癒され始めていた。
とりあえず残りのビールを飲む。
時おり橋の上を車が通る音。
流れの音。
暮れてゆく太陽。
川の景色。
無性に淋しい。
誰かと話したい。
誰かに今日の出来事を聞いてもらいたい。
僕はこんな所で何をしているのだろう。
何を考えても変わらない、ちっぽけな思いがめぐっては消えてゆく。
またビールを飲む。
頭に思い浮かぶ歌を静かに口ずさむ。
焚き火の炎は、僕をやさしく照らしてくれている。
今夜は花火大会があるのだろう、遠くで花火が見えた。

気分はなんだか妙に盛り上がってきた。
もう一度酒を買いに行く。もちろん水に濡れるのは覚悟の上。
店から戻るともう花火は見えなくなっていた。
雲が厚くかかった空には星ひとつ見えない。
橋を照らすオレンジ色のナトリウムランプだけが、ここから見える灯りだ。
昔の事を思い出す。
学生時代。なぜその学校に入ったのだったろう。
そして今、なぜこの仕事をしているのだろう。
好きだった女の子のこと、叶わなかった先輩への恋心、出来事。
その時の事を思い出してはつぶやき…
近くに人がいたら、間違いなく危ない奴と思われただろう。
そんな、考えても何も変わらないこと、でも考えると妙に楽しいことを、焚き火に向かって延々と語っていた。
誰にも言えないような本音を、焚き火に全て打ち明けた。
きっと誰かが一緒だと、本音トークが始まったことだろうな。

0時。
いいだけ酒に酔っていた僕は、歯磨きをしてテントに入った。
その後の記憶は、すぐになくなってしまった。




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