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2008年10月19日

北海道の川を旅する 《十勝川06 7/E》

2006年08月02日23:33

 さすらい

中島橋あたりから、ついに小雨が降ってきた。
それまでは半袖Tシャツで頑張っていたけど、限界。
そこから少し行った中州に艇を寄せて降り、荷物の中からウィンドブレーカを着込む。
雨はサーと降り続けた。
風流な春雨なら濡れて参ろうとも思うかもしれないが、この逃げ場の無い雨はカンベン。
なにせ、ゴールの後は札幌までの孤独なドライブだ。
とにかく濡れるにしても、先を急ごうと思った。
近づくと逃げていくアオサギ、ぽつらぽつらと見える釣師。
この川をただひたすら漕いでいた。
ふと騒がしい岩壁。
見ると数え切れないほど多くの黒く小さな鳥が、川に浸食された地層部分に無数の穴を作り、寝床としている。
ツバメの類であろうか。
ボイジャー号と僕は、自然半分・人口工作物半分の環境をもくもくとすべっていった。
いくつの橋を越えてゆくのだろう。
コンスタントに漕ぎ進み、平原大橋、すずらん大橋を越える。
ついに帯広市のシンボルでもある十勝大橋が見えた。

遠くからこの橋が見えた時は、かなり感動した。
これだけ特徴的な橋を目の前にすると、少しドキドキ感が沸いてきた。
が、それもつかの間、その橋が文明的であればあるほど、橋の下側には冷たく辛く、その姿が映りこむ。
この頃、雨がやみ、雲の切れ間から青空がほんの少しのぞき、気温も上がってきた。
河畔林ごしに恐らく児童用の球場かグラウンドかあるのだろう、試合中の歓声が聞こえた。
うれしい。
僕はこの川を下ってきて、ひたすら寂しかったのだと気がついた。
川は幅を広げ、かつ深さも増し、とうとうと流れていた。
両岸の林から、鳥のきれいな鳴き声が聞こえる。
雲の切れ間から、太陽も顔を覗かせた。

この旅はもうすぐ終わる。
ガイドマップによると最後の瀬。
小さな波に、上下に揺られながら、軽く漕ぎ、なるべくゆっくり進むようにする。
ここへきて、ようやく川下りの楽しさを取り戻してきた。
もうすぐ十勝中央大橋、十勝川温泉。
ここに7年間をともにした愛車が待っているはず。
ゴールして、片付けたら、温泉に入ろう。
ゆっくり風呂に入ろう。
携帯はすでにつながらなくなっている。
何年かぶりに、公衆電話を使って心配してるはずの大奥さまにに連絡してみよう。
十勝川は札内川と合流した。
札内川も、それ自体川下りに適した大きさの川だ。
ますます川は大河化し流れた。
流されて、流れて、漕いで。
この二日間、僕は水の上で自由だった。
ただ、ちょっと技術が無く、ツイてなかった。
もうすぐゴールのこの時に、次の川のことを考えていた。


 さすらおう この世界中を
 ころがり続けてうたうよ 旅路の歌を

 まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
 風の先の終わりを見ていたらこうなった
 雲の形を まにうけてしまった

 さすらいの 道の途中で
 会いたくなったらうたうよ 昔の歌を

 人影見あたらぬ 終列車 一人飛び乗った
 海の波の続きを見ていたらこうなった
 胸のすきまに 入り込まれてしまった
 誰のための 道しるべなんだった
 それを もしも 無視したらどうなった

 さすらいもしないで このまま死なねえぞ

 さすらおう…


そして我がボイジャー号は、十勝中央大橋を越え、愛車イプサムの元へと到着した。




******************************************
北海道の川を旅する《十勝川06》 あとがき
******************************************
もし全て読んで頂いた方がいたのなら…
僕の自儘な紀行文に、おつきあい頂きありがとうございました。
この旅を、会社のエライさんに話したら、「お前は会社組織の人間なんだから」と自制を促されました。大笑
確かに後から考えると、よく生きて帰ってきたなとも思います。
でもね、統括支店長。
人には危険をおかす自由がね、あるはずなんですよ。笑

その統括支店長は、かつてヒグマと5メートル遭遇しているらしい。

僕の危険なんて、たいしたことないっすよ。  


Posted by 餅 at 21:17Comments(0)0607十勝川

2008年10月19日

北海道の川を旅する 《十勝川06 6》

2006年07月30日00:52

 出発

テントの周りを歩く足音で目が覚めた。
もう外は明るくなっている。
ゆうべ外で足首をブヨに何ヶ所も刺されてかなりかゆい。
しかし昨晩、焚き火をしながら何故か爪切りをし、ほとんどの指で深爪してしまい指先が痛くて使えない…
掻きたい時に掻けない辛さを初めて体験。
「何時だろう…」と思って携帯を確認するけど、水没した携帯は一応電源は入るものの時計すら表示する余力もないみたい。
通話とかメール機能はいらないけど、カメラが使えないのが痛い。
まぁいいか。別に時間なんて気にしなくてもいいし、時計を見るのをやめた。
テントから這い出してみる。
遠くに足音の主であろう、胴長をつけた釣り人がさおを振っている。
外はなんとも脱力する天気。
どんより低く立ち込めた雲に、無風。湿度も非常に高い。
しかし今日の漕行距離は20キロを越える。
「これでは楽しくないなぁ…」
なんて思いながら昨日買ってきたおにぎりを頬張り水を飲んだ。
雨にふられると。。
20キロを雨に濡れながら漕いでいくなんて、考えただけで気が滅入る。
しかしこの荷物をまとめてここから歩き出す気にはならない。
サッサと下ってしまうことにする。
テントをたたみ、パッキングする。
歯を磨いて、準備完了。
するとさきほどの釣師がやってきて、挨拶を交わした。
50歳前後だろうか。紳士的な感じの人だ。

 釣師「ずいぶん重装備ですね」
 餅「そうですねー、泊まるとなると大変です。笑」
 釣師「どこまで行かれるんですか?」
 餅「十勝川温泉まで行きます。5時間も漕げば着くでしょうか」
 釣師「そんなにかからないんじゃないかな?流れも速いし」
 餅「そうですか、ここから下は釣りする方は多いんですかね?」
 釣師「けっこう多いと思いますよ。両側に人がいたりね。笑。特に早朝は。」
 餅「でもこの天気なんでもう出ようと思ってるんですよ。釣師の方には邪魔ですよね、カヌー。笑」
 釣師「でもこういうの通った後は、意外と掛かる事が多いんですよ。」

そして、湿ったままのボイジャー号は、早朝の十勝川を滑り始めた。

 「気をつけて!」

ありがとうと釣師に会釈をして、さぁ、出発。


 無感情

川は昨日と同じ、とうとうと流れた。
ところどころにゆるい瀬が現れる。
試しに漕ぎ入れるけど、昨日体験した迫り来る倒木の恐怖(おおげさ)の光景が目にチラついてイマイチ乗り切れない。
天気も相変わらず、どんよりしている。
時折り釣師の姿。
思っていたよりは少ない。
そして出会っても、「すみません通りますー」の一声をこっちからかけるだけで、無反応な釣師が多かった。
楽しいかどうか聞かれたら、正直楽しくはない。
下流に車を置いているからそこまで下る、という義務感に似たものしか、この時無かった。
こうなってくると楽しみは、橋を見上げる事ぐらいなもんだ。
この先2キロおきぐらいに橋が連続して架かる。
川下りをしていると、橋の下をくぐることはちょっとしたイベントだ。
橋脚や橋梁、構造体の部分を見上げる。
その姿は、決して美しくはないが、何千トンもの荷重がかかっているであろうその部分の強度を想像すると、うちに秘めたパワーを感じることができる。
高層ビルの1階に行く機会があれば、そこにある柱にかかる力を想像すると、似た感覚になることが出来るだろう。
順調に橋を越えて行く。
中州寄りの水中に、ニジマスの死骸を見つける。
そう言えばふだんの暮らしの中でも見かける鳥などの死骸は、ほとんど見たことが無いな。
彼らは一体、どこで死んで行くのだろう。
その亡き骸は、どこにあるのだろう。
川は士狩大橋を越えたあたりから見通しもよくなり、また十分な速さで流れている。
ゴーッという水の流れの音が聞こえると、その先には瀬や急流がある。
とある分流でその音を聞いた。
見通しが良いので早めに危険を察知できる。
倒木が障害となり、急流ができているところが何ヶ所かあった。
もちろんそういう所は、避けて通る。
ひっかかると大変だ。
川は深さも増してきていて、流されるとやっかいだ。
もう、沈はできないな。
  


Posted by 餅 at 02:43Comments(0)0607十勝川

2008年10月17日

北海道の川を旅する 《十勝川06 5》

2006年07月25日00:31

祥栄橋

祥栄橋はもうすぐそこに見えていた。
しかし、ここでひとつ問題が発生し、モタついていた。
「祥栄橋では左岸に上がるべし」と、ガイドブックにそうある。
しかし左岸は、河畔林がうっそうと続き、流心も左岸寄りで強く、見た感じ左岸に上がれるようなスペースは無い!
これは困った。
そして出した結論、「ガイドブックはミスプリだ。」
そうだと自分に言い聞かせ、静水エリアも豊富で、玉砂利の河原を形成している右岸に上陸。
一息ついた。
しかし問題は、ここから道路に上がれるのかどうかという事。
ひととおり荷物を艇から降ろし、テントも出す。
そしてさぁ、探索だ。
道路への上がり口を探していると、ものすごく悲しい事に気がついた。
上がり口が、ない。。水路によって分断されている。

 「ここ、中洲じゃん…(T∀T)」

中州は、万一増水があった時、逃げ場を失い、艇を失い、命すら失いかねない。
心も体もクタクタの状態の僕は、最後のやる気を出し、もう一度荷物を入れ直し、艇を浮かべた。
そして、更なる右岸に艇をつけた。

橋の本当にたもとだ。
ふと見た向かい側の左岸には、橋脚の部分にわずか、コンクリートで護岸されている部分がある。
その上には確かに、いかにも便利そうな平地が見えた。
更にぐったりと疲れが僕を襲った。
ヨタヨタと、砂に小石が混じるポイントにテントを設営。
初めて、本来の役目を果たすソロテント。
艇をひっくり返して、道路に上がろう。
そしてガイドブックに載ってたローソンに買い物だ。
喉が渇いて渇いてしょーがない。
多少の藪漕ぎしてもいいさ。上がろう上がろう。
沈のために湿ったカネを持ち、濡れたままの服で河原を後にした。
しかし!!またまたここも水路で分断されている!!
オーマイガァーーーーー…(T∀T)
しかし、もう一度出直そうという気はもうすでに起こらなかった。
この時すでに18時。ヘトヘトである。
「常緑の中洲っぽいし、車の入った跡もある。なんとかなるさ…」
水路は深さ約20センチ程度、幅は2メーターぐらいで流れはチョロチョロ。
こうなったらジャバジャバ行くしかない。
浅い水路を渡り、堤防を登る。
ローソンまでは徒歩約15分だ。
ずぶ濡れの30代男がコンビニで買い物をしている姿…我ながら悲しい。
2リットルの水とビール、お茶と食料を買い込んだ。
店を出ると同時に水のキャップを開け、ペットボトルをラッパ飲み。

 「うっまぁーーーーーー!!!」

水のありがたみがよくわかった瞬間、僕は500mlほどの水を一気に飲みこんだ。
今日は2時間程度しか寝ていないし、体もクタクタだ。
メシを食ってビールを飲んだら、爆睡してしまうだろう。
19時前。この季節、外はまだまだ明るい。
例の水路をバシャバシャやって、キャンプ地に戻った。
ポテトチップとビールをすごい勢いで腹に収める。
その後はテントに入って本を読んだ。
しかし、まったく眠くならない。
テントの中で2本目のビールを飲む。
そして、こぼす。。
もう、とことんツイてない日だと、ふて寝を決め込むがまったく眠くならない。
この近くに温泉があるらしいが、夜なのに水路を渡ってまた戻ってこなければならず、足が濡れると思うと、バカらしくてやめた。
雨がパラついてきた。


 焚き火

パラついた雨は通り雨で、湿度だけを残して去って行った。
テントも蒸し暑くなってきた。
暗くなった気持ちを、更に悪化させる。
エアマットに横になりながら本を読む。
しかし、蒸し暑さで居心地が非常に悪い。

 「あ、そうだ、焚き火しよう」

ここは中州で、流木は無尽蔵にある。
細めの枝を集めて来て、適当に石をよけて床を作った。
そこにライターで火をともす。
チロチロと、ゆっくり火がまわる。
やがて枝は、小さな炎に包まれた。

ゆっくり揺れながら燃えている。
僕はいつの間にか、この揺れる灯りに癒され始めていた。
とりあえず残りのビールを飲む。
時おり橋の上を車が通る音。
流れの音。
暮れてゆく太陽。
川の景色。
無性に淋しい。
誰かと話したい。
誰かに今日の出来事を聞いてもらいたい。
僕はこんな所で何をしているのだろう。
何を考えても変わらない、ちっぽけな思いがめぐっては消えてゆく。
またビールを飲む。
頭に思い浮かぶ歌を静かに口ずさむ。
焚き火の炎は、僕をやさしく照らしてくれている。
今夜は花火大会があるのだろう、遠くで花火が見えた。

気分はなんだか妙に盛り上がってきた。
もう一度酒を買いに行く。もちろん水に濡れるのは覚悟の上。
店から戻るともう花火は見えなくなっていた。
雲が厚くかかった空には星ひとつ見えない。
橋を照らすオレンジ色のナトリウムランプだけが、ここから見える灯りだ。
昔の事を思い出す。
学生時代。なぜその学校に入ったのだったろう。
そして今、なぜこの仕事をしているのだろう。
好きだった女の子のこと、叶わなかった先輩への恋心、出来事。
その時の事を思い出してはつぶやき…
近くに人がいたら、間違いなく危ない奴と思われただろう。
そんな、考えても何も変わらないこと、でも考えると妙に楽しいことを、焚き火に向かって延々と語っていた。
誰にも言えないような本音を、焚き火に全て打ち明けた。
きっと誰かが一緒だと、本音トークが始まったことだろうな。

0時。
いいだけ酒に酔っていた僕は、歯磨きをしてテントに入った。
その後の記憶は、すぐになくなってしまった。
  


Posted by 餅 at 21:49Comments(0)0607十勝川

2008年10月16日

北海道の川を旅する 《十勝川06 4》

2006年07月22日16:34

 祥栄橋までの出来事

沈をした後は、もちろん全身水浸し、コクピット内も一時浴槽状態になり全てが濡れ、もう何がどうとかこうとか一切なくなった!!

 「いよっしゃぁ~、行くぞぅ!!!」

川下りの続きだ。
まだ多分、1キロぐらいしか進んでいない。
事前にgoogleサテライトで確認していた落ち込みが来た!

また沈しても同じ!オーライオーライ。
スカウティング(危険な流れの下見をすること)なしに突っ込む。
水中のテトラポットが、流れに数十センチ程度の落ち込みを作っていた。
バウ(フネの舳先側)デッキが一瞬波の中に。
次の瞬間、バウに当たって砕けた水しぶきがビシャビシャと顔に当たる。
「ウワッホォーイィ!」
おもしれぇ!!
続いて同じく水中のテトラが水面に波を作っている場所があったが、ここも瀬としては1級程度、フネの直進安定性を保ち漕ぎ抜ける。
陽の光が少し弱くなってきた。
おそらく4時過ぎ。
十勝川は、ガイドブックにも「流速が早い」と記されている。
確かに、去年下ったお気楽豊平川とろとろ下流域とは全く違う。
こちらは中流域、見た目の速度は恐らく小走り程度(7~8km/h)に見える。
ただ、ところどころ浅くなっており、ライニングダウン(艇から降り、艇を引っ張りながら浅瀬を歩くこと:すごくめんどくさく疲れる)を強いられる。
そのせいもあり、意外にも距離は来ていないのか。
川は、中州に流れを分断され、何本かに分かれて流れていた。
ふと何気なく、広い幅で流れる本流筋では、また浅瀬が出現してライニングダウン…の可能性がふと頭をよぎった。
川幅が狭くなった方には、木々で先は見えないがとうとうとした水の流れが見える。
「よし、狭いほうに行ってみるか」
カヌーの方向をそちらに定め、流れに入って行った。
蛇行した先で見た景色は…
今、思い出しても恐くなる、いや、今思い出すから恐くなる光景だった。
その水路は、川幅一杯に早い速度で流れており、流れによってえぐられたような両岸ではフネもつけられない。
もちろん止まることなんかできない。
その先には、倒木が3重にもなって川をほぼふさいでいた。
「わわわわっ!どうしようどうしよう!?!?」
流れは待ってくれない。
そのままの速度で、なんとかジタバタして1本目の倒木の切れ目を抜けた。
しかし、数メートル先にすぐに2本目が…
そして2本目とVの字になるように、3本目も横たわっている。

もうこうなってはいくら腕があろうとも(無いけどね)、自然の流れに身を任せるしかない。
最後にパドルで倒木を直接突いてダメージを弱めようとトライしてみたが、悲しいかな何の力にもならず、ボイジャー号は川の流れに押されるように、2本目の倒木に側面から衝突、そのまま水流によって木に貼り付いてしまった。

 「ふーっ。ごめん。こんなルートを選んだ僕がバカだった」

ボイジャー号の側面には、倒木と衝突したダメージが残っていたが、船体布は破れてはいない。
そして幸いにも、ここの流れは意外と浅く、ひざ下ぐらいであったで、いったん降りてフネを立て直して抜ける事ができた。
それでもフネに当たる水流は強く、方向修正にかなりの時間を要した。
その場はなんとか脱出できたが、倒木が見えたあの光景は、僕をすっかり弱気にさせていた。
「ガイドブックに送電線が見えたら祥栄橋近しとあったな」と思い出す。
送電線が見えてくるのを、たよりなくパドリングしながらひたすら待った。
どれぐらいヨボヨボと漕いだだろう、ようやく、送電線が見えた。
あと1キロもすれば祥栄橋で上陸だ。
喉は渇ききり、お茶を流したあの沈を心から恨んだ。(笑)
移動のせいもあり、体はもうクタクタだった。
早く、早く、早く…
強く願うほど思いは叶わなくなるもので。。。。。。
  


Posted by 餅 at 23:23Comments(0)0607十勝川

2008年10月15日

北海道の川を旅する 《十勝川06 3》

2006年07月22日01:02

 十勝橋

御影駅からはタクシーを呼んで、出発地点に選んだ十勝橋へと向かう。
当初は歩いて駅から橋まで行こうと思っていたのだが、事前に車で走り距離感をつかむと、そんな気はサラサラなくなっていた。 遠すぎるもの!!
無口なドライバーは僕を乗せ十勝橋へ車を走らせた。
「橋を渡ってすぐ左折して、少し行ったところで降ろして下さい」
そこからいよいよ、僕の川旅が始まるのだ!
青い川面が見えた!
今、そこに行くからな!!
しかし…堤防上の土手はサッパリしているけれど、土手から河原に出るまでの間に、途切れ目の無い高い藪がある…
仕方ない、少し藪がマシなところを選び、大荷物を抱えて20メートルほど藪漕ぎした。
そして出たのは、幅約1メートルしかない河原。
しかしそこには、中州によって作られた細い分流ではあるが、とうとうと青い水が流れていた。
さっそくカエルの歓迎にあう。

 「よし、早く艇の組み立て!」

時間は午後2時を過ぎていた。
支笏湖でのお遊びカヌーの時のように手抜きで組み立てては十勝川に失礼だよな。
きっちりとフットブレースも取り付け、新品のコーミングカバーを装着し、いよいよツーリング用に武装した4メーター60センチの赤いボイジャーが完成した!

荷物もビニール袋にパッキングし終えると、時刻は午後3時半にもなろうとしていた。

狭い河原で、僕は汗びっしょりになってニンマリと笑っていた。

 「よしっ!出発するぞ!」

去年初めて下った川『豊平川』とは本質的に違う、”川”が目の前にある。
船出。
期待と緊張の中、荷物と僕を積み込んだボイジャーは、すぅっと水面をアメンボのように滑り出した!

 「イヤァッタァ!!!ザマーミロ!!!」

思わず口走ってしまう!
いきなり自己最高スピードの水流を体験、それでも青い空の下、目の前に広がる緑と空につながる青い水路の中、気持ち悪いぐらい笑顔の僕は十勝橋の下をくぐって行った。



 初めてのチン

それにしても今までさんざん苦しめられた40キロもの荷物が、今は水面をスゥっと走っている。
その重い重い荷物を地味に運んできた事も、流れの上に浮かぶ爽快感に比べればたいした苦労ではない。
少し行くとフライをやっている釣師に遭遇。

 釣・餅「こんにちは!」
 釣「気持ち良さそうですね!」
 餅「ええ、遠いところ来た甲斐がありましたよ」
 釣「どちらまで行かれるんですか?」
 餅「十勝川温泉までです!」
 釣(エッというような顔、でもすぐ笑顔になり)「気をつけて!」
 餅「ありがとうございます!!」

水の上にいる快感は、陸(オカ)にいる人にはなかなかわからない。
橋や岸から見る川と、川から見る川というものは全く違う別物だ。
川の上を行く自由さにシビれてくる。
危険を冒すのも、また自己責任の上で自由なのである。
そしてついに、その時はやってきた…

 沈!(チン:いわゆる転覆の事。)

難しい水流の中を行った訳ではないし、轟音たてる瀬につっこんだ訳でもない。
流れの速い十勝川の、一瞬まどろんだような優しい流れの中で、艇が横向きになったのを直そうとパドルを深く入れすぎたのが敗因だ。
つまり素沈。。かっこわるい。
フネが右に傾き、傾いたと思ったら「アッ」という間もなく僕は水中にいた。
一瞬にして、世界が変わる。
幸いにも水は腰ぐらいの深さで、流れもおだやかだったので立つことが出来た。
しかし初めての沈だ、あせらない訳がない!
右手でカヌーを、左手でパドルをつかんだ。
しかし、僕の水分補給を支えていたペットボトルのお茶が!!
流されて行く!!!

 「おーいお茶ーーー!!!待て~~~~!!!」(本当に『おーいお茶』だった)

まだ出発して15分か20分か。
お茶を失った事は痛かった。そして、少し環境破壊してしまった。
中州にたどりつくと、笑いがこみあげてきた。
「ついにやっちゃった!」という軽い満足。
幸いにも水温もさほど低くなく、夕方4時近いとは言え太陽はまださんさんと照っていた。
はっと、携帯がライフジャケットのポケットに入っていたことに気がつく。

 「水没しちゃったぞ!?」

ヤバい!携帯が頼りの旅の予定が、もろくも崩れ去る…
最も重要な、カメラ機能はすでにイカレていた。
(という訳で、今回の旅の自作写真は以降ありません。)
でも電話はかけられるようだ。
浅瀬に突っ立ったままで大奥さまに電話した。
だって、誰かに知ってもらわないと、あまりにかっこわるいし。
自分が何かズッコけた時に誰かに見ててもらった方がなんかホっとする、その現象の川版なのである。
  


Posted by 餅 at 23:48Comments(0)0607十勝川

2008年10月15日

北海道の川を旅する 《十勝川06 2》

2006年07月17日18:34

 十勝川温泉

時刻は9時を少し回ったところ、川旅の到着予定ポイントの十勝川温泉にようやく到着。
バス停もチェックしてきた。
そのバス時間までは、あと30分ほどある。
徒歩移動用に荷を組み替えた。

 「イプーちゃん、待っててよ~!」

と、車にしばしのお別れを告げ、ザックを背負い、カヌーを載せたカートを押した。
想像以上につらい。
両方合わせて40キロぐらいか。
ヨタヨタと歩く…バス時間が迫る!
バス停が見えた!
バスが交差点を曲がってやってくるのも見えた!

 「うわぁん!間に合わん!」

バスはバス停を過ぎ、こちらにやってきた。
手を上げビュンビュンと振り、なんとか止まってもらった。
助かった~。
しかし、バスに乗るとわかったのだが、こういう大荷物は他のお客さんにとっては単に邪魔なものでしかない。
カヌーのバッグだけで、通路の6割ほどの幅を占めてしまう。
なるべく場所をとらないように、荷物をビッチリ引き寄せて座った。
この時間がつらい。
早く帯広駅に着け~と心で何度も叫ぶ。
先に乗っていたおばさんに声をかけられた。
何人か連れで、温泉に泊まってきた後なのだろうか。

 オバ「(カヌーの入ったバッグを指して)これ、カヌーが入ってるの?」
 餅「はい、そうなんですよ」
 オバ「これで十勝川を漕ぐの?」
 餅「ええ、これから、ですけどね(笑顔)」
 オバ「へぇぇぇ、すごいわねぇ、気をつけてよ」

少し気が楽になる。
帯広駅には、40分弱で到着した。
10時半だ。


 乗り継ぎ

帯広駅からは電車を使って、御影という駅まで行く。
駅からはタクシーで出発点に行くつもりだ。
それにしても、帯広からの電車は、12:55発。。。
なんと乗り継ぎの待合い時間は2時間半もあるのだ!
ヒマすぎ!
この時間を利用して、帯広名物”豚丼”を食べようと思ったけど、売店に売っている駅弁の豚丼は、お値段1,100円。
とても買って食べたくなるようなな金額じゃない。
サッサと見切りをつけ、350円ののり巻を買った。

帯広はこの時間、晴れてすでに32度。
天気予報が外れてくれて本当に嬉しい。
駅前の木陰があるベンチで、早めの昼食をとる。
32度あっても、湿度は低く、とても過ごしやすい。
ここで本でも読んで時間をつぶしたかったが、昼間からワンカップをあおっては騒いでいるオッサン達がいて、すぐ近くまで来てはタバコを吸って行く。
不愉快なので駅の待合室に場所を移した。
『日本の川を旅する(野田知佑氏著:新潮社刊 ISBN:4101410011)』僕の愛読書だ。
長い待ち時間を、何度も読んだこの本をまた読んで過ごした。
ようやく電車の出発時間が近くなる。
改札を抜け、ホームに行ってみると、電車は”汽車”で、一両編成だった…
いいなぁ、ローカルで。
しかしここでも僕の荷物は邪魔者でしかない。
御影までは約40分。
地元の若者も乗り込んでいる。
目の前に女子高生がふたり立つ。

 女1「今なんのバイトしてんの?」
 女2「んー、コンビニだよ、すっげーダリィよ」
 女1「イヤな人とか来て疲れねー?」
 女2「イヤな人ねー。ムスっとしてる人とか、なんだよって思っちゃうよ。
    釣りも渡したくない。おばあちゃんとかおじいちゃんはにこやかで良いんだけど…
    30代後半ぐらいの?そのへんの奴が多いかな」
 女1「えぇー!30代後半って、一番キモいよねー」

 …云々

すみません、30代後半で…(涙)

汽車はガトゴト走り続け、僕は出発点の駅にいよいよ降り立った。

  


Posted by 餅 at 18:47Comments(0)0607十勝川

2008年10月14日

北海道の川を旅する 《十勝川06 1》

2006年07月16日23:56


 7月15・16日

かねてから予定していた、初めてのリバーツーリング、川旅。
川下りにキャンプがプラスになるというだけで、雰囲気がガラっと違う。
だいたいにして、アウトドアは好きだけどキャンプはほとんどしたことがない。
テントに泊まったのなんてもう20年近く前じゃないのか?
というぐらい。
テントは去年買ったソロ用のもの、寝袋も去年買ったし。
主要なものふたつはあったが、他の小物が全く無い。
仕事帰りや休みの日に、リストアップした欲しい物を買い溜めていった。
ザック、エアマット、ライト、ジッパー付ビニール袋・・・

前日の14日に、リストの全てのものが揃った。
そしてその深夜、肝心な地図資料の作成をしていた。
googleのサテライトには、なんと都合の良いことに今回下る部分だけは詳細航空写真があるのだ。
これでおよそのコースが読める。
春に買った『リバーツーリング55マップ』。
こちらは主に文章での情報、googleマップサテライトでは航空写真で情報を得る。
便利な世の中に感謝だなぁ。
結局資料を作ってクリアブックに入れ終わったのは、深夜2時を過ぎた頃だった。
先に終わらせていた他の荷物と一緒にしてパッキング完了。
明日は早朝5時出発予定。
大丈夫!?
気になる天気は、直前予報で15日曇、16日も曇。
まぁ… 降らないだけ良しとしよう。
この連休を逃したら他に行く機会がないのだから…
2時間半ぐらいしか寝れないけど、行くぞ!十勝川!!



 出発


早朝5時前。
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
(ちなみに言うと僕は毎日、目覚ましが鳴る前に目が覚める老人的体質)
歯を磨き顔を洗い、荷物を車(イプサム:愛称イプーちゃん)に積み込む。
この旅が、イプーちゃんとの最後のロングドライブになるだろう。
「今まで7年間、僕や家族を乗せてくれてありがとう!」
そんな思いも乗せつつ、家族が誰も起きてこないうちに、車を発進させた。
コンビニで朝メシを買う。
クリームパンとお茶を買い、運転しながら腹に収める。
とりあえず目的地は十勝川温泉付近の河原。
そこに車を置いた後にバスに乗って帯広まで出る。
そのバスは便数もとても少なく、路線バスなので時間も決まっている。
遅刻するわけにはいかないのだ。
それにしてもこのどんよりした天気が、なんとなく気乗りしない原因なのだろうか。
奥田民生の『股旅』を聞いてもやはり、“曇”が気にかかっている。
車は樹海ロードと呼ばれるうっとうしい国道を、ひたすら走っていた。
途中超える日勝峠は、日高山脈を横断する峠だ。
ここをようやく越えると、十勝平野が見えた。
雲は山脈で砕かれたのか、青空が見えているではないか!
「イヤッホォーイ!!」
一気にテンションが上がる!
更に峠を下がってくると見えてくる十勝平野は、緑と黄金色でいっぱいだ。
畑作が盛んなこの地は、穀物や野菜の一大産地となっている。
カヌー漕ぎ出し予定地『十勝橋』はそう遠く回り道するわけではない。
十勝川の上流側、その予定地の下見をすべく、車を走らせる。
橋から川が見えた!
常緑の中洲が流れを遮って、川岸は細い流れになっているが漕ぎ出しに問題はないだろう。
水が青い!
でも急がなくては。
目的地まではあと30キロ。
バスの時間まであと1時間半。
出発点下見では下車することなく、ゴール予定地点へ車を走らせた。  


Posted by 餅 at 22:52Comments(0)0607十勝川

2008年10月14日

北海道の川を旅する 《十勝川06 序》

2006年07月10日23:55

 はじめに

昨年、たかが札幌市内の2級河川(かどうかは知らない)の豊平川、しかもそのトロトロ下流域だけを下った『北海道の川を旅する・豊平川』は一部の熱狂的な方々に支えられて、(日記としては)超・長編紀行文として好評を頂きました。のか?
2006年は、ビバーク付き川下りを2本用意しています。
その2本のうちのひとつが十勝川。
初めてのビバーク。
初めての本格的水流。
少し緊張するとともに、恐怖を感じています。
しかし、冒険とは机の上で考えている時が最も恐ろしく危険で、実際に行っている時には夢中になるあまり感覚が麻痺する、と野田先生もおっしゃっています。
きっと僕もそうだと、いや実際前回はそうだったし、今年も2本の川下りを楽しんで冒険して来ます。
しかしながら、予定の日は今のところ曇りのち雨の予報。

行けるのやらどうやら。。。

しかし、準備は着々と整いつつあります。
きっと思い切り楽しめるはずだ。

ひとり、だけど…  


Posted by 餅 at 22:41Comments(0)0607十勝川
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