2011 夏至の旅 04

2011年09月14日 01:28

ランチタイムを終え、再び歴舟の流れに乗る。
透明で青い水、みるみる変わる景色、頬に当たる風が気持ちいい。
心地よくフネを流していると、前方に危険箇所を確認した。
急いでM野氏にレクチャーを行う。

 「ほら、ああいう障害物があって瀬になってるところあるじゃないですか。
  ああいう場所は通ったら危険なんで、事前にエスケープするんですよ。
  状況を判断するのに、流れの中でもストップやバックができるように
  練習しといた方がいいですよ、こんな感じでパドルを入れて…」

前方は、広かった川の流れが左岸に一気に集まって瀬を形作り、おまけに木が小高くなった岸から倒れて瀬の上をまたぎ対岸近くまで伸びてきている。
つまり、瀬の上にリンボーバーがあるような格好、それも通過ルートは小さな三角形しかない、危険なストレーナーである。
見るからにエスケープ対象なのだ。

このストレーナーを前に、近くまで漕ぎ寄ってエディに入る。
同じルートをM野氏も通ってきてくれれば問題は無い。
高等技術であるライニングダウンで巻けばいいのだ。
しかし後続のM野氏はこのストレーナーに対して真っ直ぐ進入していくではないか!!

 「沈か!?沈か!?」

半分ニヤけてその姿を目で追っていた。

しかしM野氏は僕の淡い期待を全く裏切ったのである。
水面上に伸びた木の幹を、それこそリンボーダンスよろしく、上体を反らしてくぐりぬけてしまった。

楽しそうである。

僕もリンボーがやりたくなってきた。

 「ウッ!!」

掛け声も勇壮に(そうか?)、溜まっていたエディを上り、本流に刺さろうとした。
しかし、エディを漕ぎ上がる前に本流に飲まれた。

 「あぁっ、イカーーーーン!!!」

ストレーナーの三角形に対して、もっともとってはいけない姿勢、”フネ横向き”で突っ込むことになる。

フフッ、しかしここからが腕の見せ所である。
華麗なパドルワークでこう…

気がついたら、世界が青かった。
気がついた瞬間、恥ずかしさで顔がゆがむのがわかった。
沈脱して、水中から上を見てみたら、むなしく転覆したボイジャーのコーミングが見えた。

 「あぁ、なんという…(T_T)」

沈したのだ。
三角形に対して思い切り横向きに当たってひっかかり、水流で押されてひっくり返ったのであった。
歴舟で初の黒星だ。
黒い腹を見せるボイジャーにつかまり、流されようとする。

 「大丈夫か!?」

人の沈を初めてみたはずのM野氏が心配顔で声をかけてくれる。
しかしこっちは、恥ずかしさとかっこ悪さと悔しさで胸がいっぱいである。

人にレクチャーしといて自分が沈しているのだ。

 (;´д`)。。。

こんなカッコ悪いこともなかなかなかろう。
しかも、新しい問題が発生していることに気がつくのに、そう時間はかからなかった。

僕が沈してフネと一緒に流された場所は、流れに対して袋状になった渕。
けっこうな深さがあり、平岸でもTOP5に入ると言われている高身長の僕でも足がつかない。
岸は、切り立った岩が高さ2メートルほどそびえる。
岸には上がれないというワケだ。
本流は、けっこう強めの水流である。
つまりこの渕は、それ自体がエディとなり、その水流は洗濯機のようにぐるぐると回っているのだ。

僕はすなわち、洗濯物状態なのである。

何度も何度も岩を蹴り、渕からの脱出を試みるも、本流には入れずに洗濯水流の中から出ることが出来ない。

 「クッ・・・」

フネは捨てることにした。
渦中から槍を投げるようにフネを本流に押し出す。
仲間がいて助かった。
フネはM野氏がピックアップしてくれた。
しかし残念ながら、フネに積んでいたレスキューロープは流されて行った事を確認している。
ロープで引いてもらうことは不可能、自力でこの渦流から出なくてはならない!
このときの僕の状態は、まさに流れ切れなかった使用済みトイレットペーパーである。
バカみたいにプカプカ浮きながら、同じところをグルグルと回っている。

あぁ、恥ずかしい・・・

一時も早くこの流れから脱出しなければ!!
潜水して中から出ようかな?とも思ったが、ウェットにPFD、浮きまくりである。
なんとか本流に対して垂直の体勢をとり、えぇーーーーいと渾身の力を込めて再度岸の岩を蹴ってみる。

やった、出た!!!
やっと出た!!!

本流に洗われ、少し流されてようやくこの渕から脱出した。

非常に情けない表情で川原に上がったことは、言うまでも無い。

上から下までズブ濡れ、フネの水抜きを悲しい気持ちで行った。
ついさっきまで、こんな顔して幸せ満天だったのに。

 


しかし冷静に考えると、これは僕の好きな単独行では非常に危険な状態であった。
二人で良かった、助かった。

気を取り直して再出発。
M野氏は案の定

 「人に指導しといて、自分が沈だぞ!?」

と笑い僕をいじめた。

あぁ、体が冷えた。
小便のため、ほどなく川原休憩をとった。

 

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