北海道の川を旅する《歴舟川 3》
旅路の歌
転がり続けて歌うよ 旅路の歌を~~ (奥田民生『さすらい』より)
公園でランチをとった後、再び尾田を目指して漕ぎ上がる。
さすがに疲れてきてはいたが、普段からロングサイクリングにはある程度自信がある。
会社まで片道14キロの道のりを、週に何度かこいでいる。
それに比べれば、この信号のない、クルマも少ない道はたやすいものだ。
約2時間の走行。
ついにカムイコタンキャンプ場脇の神居大橋が見えた!
「ヒャッホゥ!!」
テンションが上がり、思わず立ちこぎする。
無事にテントサイトに戻ってこれた。
元は8,000円ぐらいで買った made in china のチャリだが、モンベルで買ったステッカーがかっこよく、なんとなく頼もしい。
汗が噴き出している。
チャリを停め、クールダウンでテントの前に座っていると、お隣のおばさんが声をかけてくれる。
「どこから来たんですかー?」
若いお母さんも話にのってくる。
今日の顚末を話す。
「海までクルマで行って、クルマを置いてきて、河口からチャリで上がって来たんですよー」
おどろくお二人。
「えええっ!!!すごい!!!すごいですね!!!」
だろぉ~?
俺ってすごいだろぉ~?
と自己満足な世界に入ってニヤけつつ、なんでここまでストイックな事をするんだろうと自分を振り返る。
「自分でもなんでこんなきついことをするのか、よくわかりません。笑」
ひとしきり会話をさせてもらった後、ご褒美の黒ラベルを開ける。
今日、最初のビールだ。
うまくないワケがない。
カァァァーーーーーーーッ!!!
うますぎる!!!
これだ。
これだから、ビールはやめられない。
一度始まると歯止めがきかなくなるが、ググっとこらえて焚き木拾いへと出かけた。
拾った枝の一本には、明らかにクマのものとわかる毛がモサっとくっついていた。
末恐ろしい…マジでいるんだな。。
キャンプ場の夜
ふと気がつくと川原に父子2名の親子連れが見えた。
非常に軽装で、ななめがけバック程度しか持ってない。
彼らも焚き木拾いをしている。そしてもう夕方だ。
一体、何をしようとしているのだろう…?
ほどなくキャンプ場の急坂を下って、宅急便のトラックが!
近寄る親子。
「アァ、なるほど!そういうことか!」
荷物を見ると、僕と同じくファルトボートを折りたたんだバッグと、大きなザックがひとつ。
荷物を川原へ運んだ親子は、おもむろにキャンプの準備を始めた。
キャンプ場に、宅配してくれるということを初めて知った。
子供の方がファルトを早速組み立てている。
迷わず声をかけた。
聞くと、東京から荷物を送って、これから歴舟川を5日間かけて川下りするという。
すばらしい。
そんなペースで僕も旅をしてみたい。
一緒に酒を飲みながら…という事にはならなかったが、お互いの焚火で、お互いに明日から始まる川への思いをふくらませていた。
雲の切れ間から無数の星が姿を現しては消える。
疲労と酒の力ですっかりぐったりモードの僕は、寒さを感じてきたのを合図に、寝袋にもぐりこんだ。
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