すっかり学習した僕は、自衛隊色の長靴でこの問題を難無くクリアした。
コンビニで食料、お菓子、ビール、お茶、水などを買い込む。
「この汚いオッサンはどこから来たんだろう?」と店員は思っているに違いなかった。
帰り道、お茶を飲みながらブラブラと野営地に戻る。
途中で悪友のKKに電話する。
餅「ようKK!十勝川いいぜ、最高だよ!
後志利別川みたいに歩かなくていいんだよ!」
KK「いいなぁ、俺も行きたいなぁ、今日はどんな感じだった?」
餅「出発地点は臭かった。放牧地帯からの出艇だったから、屎尿臭いし
なんかたまにオッサンの息みたいなニオイもするんだよ…」
KK「お前の股間とお前自身の口のニオイだろうが!」
餅「(爆笑)…来年は一緒に来ような!!」
携帯電話ってステキだ。
いつでも爆笑できる友達に電話できるんだ。
川原に戻って流木を集める。
今夜は極上の焚き火をするぞ!
この場所は、無尽蔵に流木があり、それらがカラッカラに乾いていて燃えやすいのが、最高にいいところ。
一人でこんなに燃やすのか!?と自分でも思うほど大量の流木を集めて来ては、適当な大きさに折ってストックしておく。
少しハラも減った、ビール飲もう!
プリッツをつまみに一番搾りをググッとやる。
クゥーッ、サイコーーーーッ!!!
飲みながら焚き火スポットを作り、小さな折りたたみテーブルを出し、ラジカセを荷物から取り出す。
ひとりきりの宴会に向け、準備は万端なのである。
ここでひと風呂浴びに近く(と思われた)川北温泉を目指して再度岸に上がる。
「うわぁ・・・」
祥栄橋から見た、夕日に染まる十勝川と日高山脈。
この景色は今、全て僕のものだ。
僕以外に誰もいない。独り占め…である。
キャンプの夜
川北温泉は思ったよりも遠かった。徒歩約40分弱。
何やら赤・青・黄の怪しげなランプが田舎臭さをかもし出している。
370円ナリ。
独特の、ちょっとトロっとしたようなモール温泉。
その日滝のように流れ体にこびりついた汗を一気に流す。
露天風呂でなぜか鼻血が出た。すぐ止まったけど。
ふだんから鼻血をよく出す僕は、こんなトコロに来ても、鼻の粘膜の弱さを露呈してしまう。
ふと親子が目に留まる。
なぜか父親の乳首をひねってこねくりまわしている5歳ぐらいの男の子が印象的だった。
湯上りにアイスを食べ、サイトに戻った。
薪に火をともし、いよいよ宴会の始まり!
誰もいない川原でひとりきり夜を過ごすことに、普通は不安を覚えるだろう。
でもこれが最高なんだな、迫り来る自然の、静寂たる闇の迫力、静かだが雄弁に僕に語りかけてくる。
僕はそのパワーをビールで腹に流し込む。
テリヤキバーガーも食べる。
ビールを飲む。
おにぎりも食べる。
ビールを飲む。
プリッツも食べる。
ビールをまたグビリ。
ABBAを聞こう!
CDラジカセにCDをセットし、dancing queenを一緒になって歌った。
you can dance~♪!!もう最高!!溶けそうである。
しかし、やっぱりちょっと淋しい。(哀)
誰かに今日のカヌー話をしたい。
こんな時は五島の友人、カドジュンだ。
秋の五島旅行のことを理由に、携帯を握った。
カ「どうしたんすか、淋しかですか!?」
カドジュンは僕が今日ひとりで川下りをすることを知っている。
餅「うん。。。」
カ「(爆笑)やっぱり!そう思った!」
つられて僕も爆笑する。
誰もいない闇夜にこだまするけたたましい笑い声。
しかし近辺には民家も無く、誰もそんなものには気が付いていないのであった。
それが、いいのだ。
完全に酔っ払いの電話魔である。
相手の迷惑は考えず、僕だけ盛り上がっているのだ。
それで、いいのだ。
いよいよ自然との会話の時間だ。
CDはJAZZをセット。
コレクションから選りすぐりの数枚を持って来ている。
焚き火は豪勢に燃える。
色んなことを思い出しては考える。
好きだった女の子のこと、憧れてた先輩への想い、通っていた学校のこと、卒業してから今までの仕事のこと…
考えることを、僕の周りを圧倒的な力で支配している自然に促されるのだ。
こんな中、ひとりきりでいると、それが不便な環境であればあるほど、普段の生活に感謝する心が芽生える。
帰ったら思い切りノエと遊んでやろう。
テントにもぐりこみ、Dextor Gordonの『GO!』という、寝際にあまりふさわしくなさそうな題名のCDをかけながら、横になる。
全然眠くねぇやと思いつつ寝袋にもぐりこむが、2曲目の記憶が無い。
とにかくまた今年も、最高な夜を迎えていたのであった。
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