北海道の川を旅する《十勝川リベンジ 5》

2009年01月18日 22:30

 祥栄橋キャンプサイト

そんな名のキャンプ場があるわけじゃないよ。
勝手に川原に泊まるだけ。
でもそれが極上の時間となるんだなー。
祥栄橋下流側の砂地にテントを設営し終わり、活動に入る。
お茶はとっくに飲み干してノドはカラカラだ。
濡れた衣服を着替え、サラリさわやかな着心地である。
ウォーターシューズから長靴に履き替え、歩いて2キロほどのローソンに向かった。
この宿営地、岸に上がるにはひとつ浅い水路を越えなければならない。
夜にサンダル履きで足を濡らしながらザブザブ水を渡るのは気持ちの良いものではない。
去年、そういう悪い経験をしているので今回は長靴。
経験ってすばらしい。
すっかり学習した僕は、自衛隊色の長靴でこの問題を難無くクリアした。
コンビニで食料、お菓子、ビール、お茶、水などを買い込む。
「この汚いオッサンはどこから来たんだろう?」と店員は思っているに違いなかった。
帰り道、お茶を飲みながらブラブラと野営地に戻る。
途中で悪友のKKに電話する。

 餅「ようKK!十勝川いいぜ、最高だよ!
   後志利別川みたいに歩かなくていいんだよ!」
 KK「いいなぁ、俺も行きたいなぁ、今日はどんな感じだった?」
 餅「出発地点は臭かった。放牧地帯からの出艇だったから、屎尿臭いし
   なんかたまにオッサンの息みたいなニオイもするんだよ…」
 KK「お前の股間とお前自身の口のニオイだろうが!」
 餅「(爆笑)…来年は一緒に来ような!!」

携帯電話ってステキだ。
いつでも爆笑できる友達に電話できるんだ。

川原に戻って流木を集める。
今夜は極上の焚き火をするぞ!
この場所は、無尽蔵に流木があり、それらがカラッカラに乾いていて燃えやすいのが、最高にいいところ。
一人でこんなに燃やすのか!?と自分でも思うほど大量の流木を集めて来ては、適当な大きさに折ってストックしておく。

少しハラも減った、ビール飲もう!
プリッツをつまみに一番搾りをググッとやる。
クゥーッ、サイコーーーーッ!!!
飲みながら焚き火スポットを作り、小さな折りたたみテーブルを出し、ラジカセを荷物から取り出す。

ひとりきりの宴会に向け、準備は万端なのである。

ここでひと風呂浴びに近く(と思われた)川北温泉を目指して再度岸に上がる。

 「うわぁ・・・」

 
祥栄橋から見た、夕日に染まる十勝川と日高山脈。


この景色は今、全て僕のものだ。

 


僕以外に誰もいない。独り占め…である。



 キャンプの夜

川北温泉は思ったよりも遠かった。徒歩約40分弱。
何やら赤・青・黄の怪しげなランプが田舎臭さをかもし出している。

 

370円ナリ。
独特の、ちょっとトロっとしたようなモール温泉。
その日滝のように流れ体にこびりついた汗を一気に流す。
露天風呂でなぜか鼻血が出た。すぐ止まったけど。
ふだんから鼻血をよく出す僕は、こんなトコロに来ても、鼻の粘膜の弱さを露呈してしまう。
ふと親子が目に留まる。
なぜか父親の乳首をひねってこねくりまわしている5歳ぐらいの男の子が印象的だった。
湯上りにアイスを食べ、サイトに戻った。
薪に火をともし、いよいよ宴会の始まり!

 

誰もいない川原でひとりきり夜を過ごすことに、普通は不安を覚えるだろう。
でもこれが最高なんだな、迫り来る自然の、静寂たる闇の迫力、静かだが雄弁に僕に語りかけてくる。
僕はそのパワーをビールで腹に流し込む。
テリヤキバーガーも食べる。
ビールを飲む。
おにぎりも食べる。
ビールを飲む。
プリッツも食べる。
ビールをまたグビリ。

ABBAを聞こう!
CDラジカセにCDをセットし、dancing queenを一緒になって歌った。
you can dance~♪!!もう最高!!溶けそうである。

しかし、やっぱりちょっと淋しい。(哀)
誰かに今日のカヌー話をしたい。
こんな時は五島の友人、カドジュンだ。
秋の五島旅行のことを理由に、携帯を握った。

 カ「どうしたんすか、淋しかですか!?」

カドジュンは僕が今日ひとりで川下りをすることを知っている。

 餅「うん。。。」
 カ「(爆笑)やっぱり!そう思った!」

つられて僕も爆笑する。
誰もいない闇夜にこだまするけたたましい笑い声。
しかし近辺には民家も無く、誰もそんなものには気が付いていないのであった。
それが、いいのだ。
完全に酔っ払いの電話魔である。
相手の迷惑は考えず、僕だけ盛り上がっているのだ。
それで、いいのだ。

いよいよ自然との会話の時間だ。
CDはJAZZをセット。
コレクションから選りすぐりの数枚を持って来ている。
焚き火は豪勢に燃える。



色んなことを思い出しては考える。
好きだった女の子のこと、憧れてた先輩への想い、通っていた学校のこと、卒業してから今までの仕事のこと…
考えることを、僕の周りを圧倒的な力で支配している自然に促されるのだ。
こんな中、ひとりきりでいると、それが不便な環境であればあるほど、普段の生活に感謝する心が芽生える。
帰ったら思い切りノエと遊んでやろう。

テントにもぐりこみ、Dextor Gordonの『GO!』という、寝際にあまりふさわしくなさそうな題名のCDをかけながら、横になる。
全然眠くねぇやと思いつつ寝袋にもぐりこむが、2曲目の記憶が無い。

とにかくまた今年も、最高な夜を迎えていたのであった。


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