四国の川を旅する《四万十川 09》
目的地、かわらっこ
口屋内の、橋梁が落ちた沈下橋に多少びびりながら通過。
すぐに口屋内大橋にさしかかる。
川地図によるとこの先川幅が細くなるようだ。
細くなった川は、当然ながら多少の急流となる。
が、やさしさのカタマリのような四万十川は、そんな常識もくつがえし、ひたすらゆったりとゆっくりと流れた。
天気は相変わらずのどんよりとした曇りである。
静かな水面を落ち着いて下る。
曇ってはいるもののほとんど無風のおだやかな春の一日。
僕はこの川にナゼあこがれていたのだろう。
テレビやガイドブックで紹介される四万十川は水自体が『最後の清流』そのままの美しさだった。
しかし、今回下っているそれは、まったく感じられない。
だが、このおだやかな空気に支配され、僕は予想とは違った魅力を感じずにはいられなかった。
久保川あたりでトイレ休憩。
河原でケムリを吐き出しながら、言いようのない満足感に包まれていた。
対岸側には、川のカーブの外側にできる、ちょっとしたチャラ瀬が見える。
ちょっと遊んでいくか。
再びボイジャーに乗り込み、浅いイン側を少し遡る。
メインカレントに乗ってチャラ瀬へ。
多分、四万十川を下り始めて初めての瀬遊びだ。
ドンブラコと艇を揺らす波。
瀬さえおだやかである。
今日の目的地『かわらっこ』まではもう半分の行程であった。
鵜の江の沈下橋。
ここの川原は大川観光キャンプ場となっている。
小さめの施設がちらりと見えた。
川面はついに静水と化す。
山並みを映し出して、美しい。
この景色を壊したくないと思い、ゆっくりとパドルを入れた。
下流から何やら視界に入ってきた。
「あ、川船だ」
この川下り中、まだ水の上でパドラーはおろか人の乗ったフネとも出会っていない。
少し新鮮な気持ちで川船が上流に上がっていくのとすれ違った。
間もなく今日の目的地『かわらっこ』に到着だ。
ついにポツリポツリと雨粒が顔に当たり始めていた。
あなたにおススメの記事
関連記事