2006年07月22日01:02
十勝橋
御影駅からはタクシーを呼んで、出発地点に選んだ十勝橋へと向かう。
当初は歩いて駅から橋まで行こうと思っていたのだが、事前に車で走り距離感をつかむと、そんな気はサラサラなくなっていた。 遠すぎるもの!!
無口なドライバーは僕を乗せ十勝橋へ車を走らせた。
「橋を渡ってすぐ左折して、少し行ったところで降ろして下さい」
そこからいよいよ、僕の川旅が始まるのだ!
青い川面が見えた!
今、そこに行くからな!!
しかし…堤防上の土手はサッパリしているけれど、土手から河原に出るまでの間に、途切れ目の無い高い藪がある…
仕方ない、少し藪がマシなところを選び、大荷物を抱えて20メートルほど藪漕ぎした。
そして出たのは、幅約1メートルしかない河原。
しかしそこには、中州によって作られた細い分流ではあるが、とうとうと青い水が流れていた。
さっそくカエルの歓迎にあう。
「よし、早く艇の組み立て!」
時間は午後2時を過ぎていた。
支笏湖でのお遊びカヌーの時のように手抜きで組み立てては十勝川に失礼だよな。
きっちりとフットブレースも取り付け、新品のコーミングカバーを装着し、いよいよツーリング用に武装した4メーター60センチの赤いボイジャーが完成した!
荷物もビニール袋にパッキングし終えると、時刻は午後3時半にもなろうとしていた。
狭い河原で、僕は汗びっしょりになってニンマリと笑っていた。
「よしっ!出発するぞ!」
去年初めて下った川『豊平川』とは本質的に違う、”川”が目の前にある。
船出。
期待と緊張の中、荷物と僕を積み込んだボイジャーは、すぅっと水面をアメンボのように滑り出した!
「イヤァッタァ!!!ザマーミロ!!!」
思わず口走ってしまう!
いきなり自己最高スピードの水流を体験、それでも青い空の下、目の前に広がる緑と空につながる青い水路の中、気持ち悪いぐらい笑顔の僕は十勝橋の下をくぐって行った。
初めてのチン
それにしても今までさんざん苦しめられた40キロもの荷物が、今は水面をスゥっと走っている。
その重い重い荷物を地味に運んできた事も、流れの上に浮かぶ爽快感に比べればたいした苦労ではない。
少し行くとフライをやっている釣師に遭遇。
釣・餅「こんにちは!」
釣「気持ち良さそうですね!」
餅「ええ、遠いところ来た甲斐がありましたよ」
釣「どちらまで行かれるんですか?」
餅「十勝川温泉までです!」
釣(エッというような顔、でもすぐ笑顔になり)「気をつけて!」
餅「ありがとうございます!!」
水の上にいる快感は、陸(オカ)にいる人にはなかなかわからない。
橋や岸から見る川と、川から見る川というものは全く違う別物だ。
川の上を行く自由さにシビれてくる。
危険を冒すのも、また自己責任の上で自由なのである。
そしてついに、その時はやってきた…
沈!(チン:いわゆる転覆の事。)
難しい水流の中を行った訳ではないし、轟音たてる瀬につっこんだ訳でもない。
流れの速い十勝川の、一瞬まどろんだような優しい流れの中で、艇が横向きになったのを直そうとパドルを深く入れすぎたのが敗因だ。
つまり素沈。。かっこわるい。
フネが右に傾き、傾いたと思ったら「アッ」という間もなく僕は水中にいた。
一瞬にして、世界が変わる。
幸いにも水は腰ぐらいの深さで、流れもおだやかだったので立つことが出来た。
しかし初めての沈だ、あせらない訳がない!
右手でカヌーを、左手でパドルをつかんだ。
しかし、僕の水分補給を支えていたペットボトルのお茶が!!
流されて行く!!!
「おーいお茶ーーー!!!待て~~~~!!!」(本当に『おーいお茶』だった)
まだ出発して15分か20分か。
お茶を失った事は痛かった。そして、少し環境破壊してしまった。
中州にたどりつくと、笑いがこみあげてきた。
「ついにやっちゃった!」という軽い満足。
幸いにも水温もさほど低くなく、夕方4時近いとは言え太陽はまださんさんと照っていた。
はっと、携帯がライフジャケットのポケットに入っていたことに気がつく。
「水没しちゃったぞ!?」
ヤバい!携帯が頼りの旅の予定が、もろくも崩れ去る…
最も重要な、カメラ機能はすでにイカレていた。
(という訳で、今回の旅の自作写真は以降ありません。)
でも電話はかけられるようだ。
浅瀬に突っ立ったままで大奥さまに電話した。
だって、誰かに知ってもらわないと、あまりにかっこわるいし。
自分が何かズッコけた時に誰かに見ててもらった方がなんかホっとする、その現象の川版なのである。